55 ページ6
(出水公平視点)
後輩に負けて悔しい!とか、楽しい戦闘にもう一回!とか、今の動きすげー!とか、普段の俺ならそう思っていただろう。
トリオン体を破壊され、個室に戻った俺は熱のこもった顔を頭ごと抱えながらその場にしゃがみ込んだ。
なんだこれ、俺どうなっちまったんだ?!
尊との戦闘は本当に楽しかった。『無傷の小人』は伊達ではなく、本当に一発も弾が当たらない。
平行線になりかけていた中、尊の急襲…対応できると思っていたら俺の弾は尊のバイパーで相殺された…というか尊もリアルタイムで弾道引けるとは聞いてたけど、正確過ぎるだろ…。
そんなことを考えつつも、脳裏には最後の尊の表情がこびりついて離れない。
やりきったと安心した様な、とろける様な笑顔。しかしどこか、してやったりといった雰囲気…。
子供なのか、大人なのか、両方なのか、尊は独特な雰囲気を持っている。
普段は子供っぽいが、時々ああした大人っぽい表情や言動をするので驚かされる。
普段から構い倒しているが、一方的ではなく尊からも懐かれているのは自覚していたし、憧られているのも本人から聞いていた。
可愛い後輩だ。
可愛い後輩…の、はずなのに、俺の心臓はとんでもない音を立てている。
顔から熱が引かない。
落ち着け、いや、落ち着いている…これはなんだ?
自分の身に起こっている異変に戸惑う。
表情に驚いた?それだけでこんなになるか?
しかし、あまりこの状態で個室にこもったままでは、きっと外で待っているであろう尊を困らせてしまう。
どこかネガテイブなところがあるし、変な勘違いをする前に出てかねぇと。
そう思い、必死に顔の熱を冷まし、呼吸を整えることで心臓を落ち着ける。
とりあえず、考えるのは後だ。
俺はなんとかロビーに出ると、やはり心配そうな顔で待っている尊を見つけた。
「あ、い、出水先輩!大丈夫でしたか?その、遅いなって…えっと…」
「んー、後輩に負けてショックに打ちひしがれてた」
俺がそう言えば顔面蒼白になる。この素直さが本当に可愛い。
「冗談だよ!むしろよくこの短期間までここまで成長したな!
後輩の成長に驚いて放心してたわ!」
少し嘘をつくのは心苦しくも思ったが、自分でも理由がわからなかったのでとりあえず頭をグジグジと撫でる。
「あ、よ、よかった…ありがとうございます…」
少し照れた様に小声で返す尊に、またドクリと心臓が鳴った気がしたが気づかないふりをした。
353人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アップルパイになりたい(プロフ) - 更新待ってます! (2023年1月30日 15時) (レス) @page46 id: fcb69bf060 (このIDを非表示/違反報告)
例のやつ - 面白くて腹筋痛い…続きをお待ちしております! (2021年11月7日 21時) (レス) @page46 id: 5d3b9960b6 (このIDを非表示/違反報告)
そらちゃんです!!(プロフ) - 応援してます! (2020年6月19日 10時) (レス) id: c4f3cb5b0b (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 面白すぎて1話から一気読みしちゃいました!笑 更新待ってます!頑張って下さい! (2019年11月2日 17時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ豆(仮)(プロフ) - 更新待ってます! (2019年5月11日 22時) (レス) id: 97b4437434 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:こんにゃくの様な何か | 作成日時:2019年3月11日 18時