【WT】唯我尊に生まれましたけども2【出水寄り】 (ページ40)

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(出水公平視点)

俺は朝のニュースを見て絶句した。
尊が、事故に遭った。

いや、正確には、大事故になるのを止めたが、その代わり尊が大怪我を負った。

ニュースで身体中にガラス片が、とか、足を骨折とか、腕に15針縫う大怪我、とか…段々血の気が引いていくのが自分でも分かった。
尊の顔が頭に過ぎる。

母親もニュースを見たようで、『ボーダー隊員』という言葉に、俺の表情の理由を察したらしい。
知り合い？と聞かれたので、大切な後輩と答えた。
電話をかけようとして、寝ているかもとやめる。
代わりに、『ニュース見た、大丈夫か？心配だから、電話できそうならしたい』とメールを送る。

予想外に、直ぐに返信が来た。

『ニュースは大袈裟に言ってるだけなので大丈夫です！
出水先輩と電話したいのは山々なんですが、今家で見張られてて…ごめんなさい、メールしか許されてないんです』

尊の残念そうな声が聞こえる様な文面に苦笑する。
とりあえず意識がハッキリしている様で良かった。

『こっちこそ朝から悪かった
とりあえず連絡取れて良かった
ゆっくり休んで早く元気になれよ』

『いえ、朝から出水先輩からメールを貰えたので今日は良い日になります！
心配していただけて嬉しいです
お言葉に甘えて暫く休ませていただきます』

怪我をしているのに俺のメールひとつで良い日になるわけ無いだろうと思いつつも、普段の尊の態度を思い出し本気で言ってそうだと笑ってしまう。

しかし、心配なのには変わりない。

俺はその日、ずっと尊の事が気になって学校でも上の空だった。

それから、尊は療養のために一週間ボーダーを休んだ。当然だ。

メールでのやり取りはしているが、顔が見たい…本当は、怪我が酷いんじゃないかと不安になる。
『もうすぐ防衛任務に復帰できそうです』というメールの文字に、むしろ不安が大きくなる。
無理をしているんじゃないだろうか。

骨折が一週間で治るなんて思えない。

おそらく、動ける様になったら本部まで来て、トリオン体になれば良いと考えているのだろうが…。

ラウンジで悶々とメールの文面を見る。

…見舞いに行きたい…が、尊は病院ではなく自宅に居る。
それも、監視されているらしい…父親の過保護故の行為だろうが…。

深い溜息を吐いた時、背後から声をかけられた。

「あ、出水さんやっと見つけた
尊の見舞いに行きません？」

振り向くと同時に、菊地原の顔を凝視してしまった。
俺の悩みはなんだったんだ…？