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(菊地原士郎視点)
僕は目の前で風間隊のA級昇格をだらしのない笑顔で喜びながら早く戦いたいと話す戦闘バカに、なんだ、平気そうじゃん、と、拍子抜けする。
実は、出水さんからこっそり父親の話をされた時倒れたという事を聞かされていた。
持ち直したっぽいけど一応気にしてやってほしい、と。…過保護だよね、あの人。
僕はそれなりに尊が父親にどういう感情を持っているかは察していたし、そりゃそうなるよな、と思っていた。
でも、本人はランク戦が近づけば近づくほど楽しみだと毎日のように話す。
…『出水先輩』の効果は絶大だったようだ。
太刀川さんや出水さんの自慢話をよくされるが、だいたい、2:8の割合だ。
太刀川さんはたまに自慢か?と思うような褒められ方をしている。
この前なんか、太刀川さんの強さの秘密が分かったと真剣な顔で、学力を戦闘力にガン振りしてるんだよ…と言ってきて流石に笑いそうになった。
うん、馬鹿にしてる。
「でも戦闘スタイル変え過ぎたせいで最初の目標とは全然違う方向性に進んじゃったなぁ…」
「最初は壊れない囮か肉壁、だったっけ?」
出会った頃の会話を思い出す。実力はあるのになんで低い目標だ、と思いもしたが、入隊予定の隊が太刀川隊じゃ仕方もないのかなと当時は思っていた。
「そうそう、今はなんかねー…自己主張の激しい肉壁な囮だね」
「変わんなくない?」
「変わったよ!主に積極性が!!」
要は、点を取る気でいる、ということだろう。
最初は失点にならない、という目標からスタートしたのにすごい進歩だ。
正直、ここまで楽しそうに自分をいじめ抜いて努力する馬鹿、こいつぐらいだと思う。
これ以上が他にいたら流石に引く。
「まぁ無傷の小人の命もあとちょっとだね」
「残念だけど絶対それは有り得ないよ…防御特化だからね、僕は!」
得意気に胸を張る尊の髪の毛がさらりと流れた。
出会った頃はショートだったけど、今じゃ僕ぐらいある。
「髪、伸びたね」
なぜか口に出していた。
「え?あー、本当だ…ランク戦終わったら切ろうかな…」
自分の黒髪を触り、尊は毛先を摘む。
「母さんはロングだったんだよなぁ…」
「安定のマザコン…伸ばすの?」
「いや、流石に僕がストレートロングにしたら完全に美少女になるから…ショートヘア維持するつもり」
「自分で美少女とか言えるって凄いよね」
「これも努力の結晶だからね!」
…ほんと、変なやつだけど不思議と居心地が良いんだよな。
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アップルパイになりたい(プロフ) - 更新待ってます! (2023年1月30日 15時) (レス) @page46 id: fcb69bf060 (このIDを非表示/違反報告)
例のやつ - 面白くて腹筋痛い…続きをお待ちしております! (2021年11月7日 21時) (レス) @page46 id: 5d3b9960b6 (このIDを非表示/違反報告)
そらちゃんです!!(プロフ) - 応援してます! (2020年6月19日 10時) (レス) id: c4f3cb5b0b (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 面白すぎて1話から一気読みしちゃいました!笑 更新待ってます!頑張って下さい! (2019年11月2日 17時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ豆(仮)(プロフ) - 更新待ってます! (2019年5月11日 22時) (レス) id: 97b4437434 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんにゃくの様な何か | 作成日時:2019年3月11日 18時