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(忍田真史視点)
尊君に父親の話がタブーなのは分かっていた。しかし、どうしても避けられない話もある。
しかし、まさか意識を失うほど動揺するとは思っていなかった。
「っ、俺、医務室連れて行きます!」
出水が尊君を抱え、出来る限り揺らさない様気遣いながら早歩きで部屋を出て行った。太刀川と国近も驚い様子で見送る。
「…あー、俺不味いこと言っちゃいましたかね」
唐沢さんが困った風に聞いてくるが、正直、俺も動揺していた。
「私には、なんとも…太刀川、なんか知ってるか?」
「えっ、いや……とにかく父親が嫌いってことしか……あ、唐沢さんに、あいつ、見たいって言ったのが本当かどうか確認してましたよね、それじゃないっすか?」
太刀川の言葉に、ハッとする。
「そういえば…半年前のあの話し合いの時、尊君は父親と初めて目が合ったと……」
根付さんは覚えていた様でそういえば、と小さく声をあげる。
唐沢さんが難しい顔で考え込み…そして、口を開いた。
「…つまり、今まで一切交流のなかった父親が何故急に『見たい』と言い出したのか理由がわからず恐怖したって感じですかね…」
「恐怖…?」
「俺には、そんな表情に見えましたよ」
唐沢さんは尊君と何度か仕事で合っている…唯我さんの秘書としてだが。
「確かにあそこの親子はこじれてそうとは思っていましたけど……ここまでとは…
とりあえず、尊君が回復するのを待ちましょうか」
唐沢さんの言葉に頷く。
3時間後、尊君が目を覚ましたと報告を受けて再び集まった。
尊君はまだ顔色が悪かったが、まず、急に倒れた事を私達に謝ってきた。
そして、青白い顔のまま、しかしイキイキとした表情でとんでもない言葉を言い放った。
「ランク戦見学の件ですが、ぜひ受けましょう!そして、それを利用して唯我から金を搾り取れるだけ搾り取りましょう!大丈夫です、どれだけなら出せるか、唯我の資産のことは僕が一番よく分かっています!」
空元気にしか見えないが、声は明るい。
「まず、ボーダー関係者以外を施設に入れる事、隊員以外が見る事のできないランク戦を見ること、そこで得られる視覚的な情報に、ボーダー隊員になった僕が色を付けて価値を上げます
その上で、信頼量としてお金を落としてもらいます。これだけのお金で得た情報、他には漏らさないよね?ってヤツです」
尊君はにっこりと笑った。
「父の説得は、僕に任せてください」
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アップルパイになりたい(プロフ) - 更新待ってます! (2023年1月30日 15時) (レス) @page46 id: fcb69bf060 (このIDを非表示/違反報告)
例のやつ - 面白くて腹筋痛い…続きをお待ちしております! (2021年11月7日 21時) (レス) @page46 id: 5d3b9960b6 (このIDを非表示/違反報告)
そらちゃんです!!(プロフ) - 応援してます! (2020年6月19日 10時) (レス) id: c4f3cb5b0b (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 面白すぎて1話から一気読みしちゃいました!笑 更新待ってます!頑張って下さい! (2019年11月2日 17時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ豆(仮)(プロフ) - 更新待ってます! (2019年5月11日 22時) (レス) id: 97b4437434 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんにゃくの様な何か | 作成日時:2019年3月11日 18時