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(忍田真史視点)
「あの、まず、自分はあの父親が嫌いなので、唯我という苗字も嫌なんです」
ストレートな言葉に一瞬驚く。
この子は、時々結構、きつい事を可愛い顔でさらりという事があるので心臓に悪い。
「それで、僕の名前の方なんですけど、尊いって漢字を書いて、『たける』って読むんですが、
僕が生まれる前から漢字だけは決まってたらしく、読み方を『たける』にするか『みこと』にするかで、父と母がすごく言い争ったそうなんです」
段々と話が見えてくる。
「結局父が男なら『たける』だって押し通しちゃったらしいんですけど、母は頑固で、ずっと僕のことを『みこと』と呼んでくれていたんです
なので、クソお…失礼しました…父親が付けた名前より、母が呼んでくれていた名前で呼ばれたいなと、前から願望があって…」
友達にもお願いしたんですけどと苦笑する尊君…いや、みこと君にわがままどころかなんとも切ない理由だと思った。
「おま…そういうのは早くいえよ!俺散々『たける』って呼んでたじゃん!今日から『みこと』って呼び倒してやるからなぁ〜!!」
「わ、わ、出水先輩!」
出水がみことくんのほっぺをひっぱる。
子供がじゃれている様な光景に、先程までの寂しそうな表情のみこと君は居なかった。
「つーかいっそ、ボーダー内で名乗る時『みこと』の方で通せば?」
太刀川の言葉に俺も頷く。
「そうだな、絶対本名でなければいけないという規則はないし、隊員登録も『みこと』表記にしておこう」
「い、良いんですか?!う、うわぁ、嬉しいです!」
俺たちの言葉に、みこと君はそれはもう嬉しそうな笑顔でお願いしますと頭を下げてきた。
「自己紹介する時もわざわざ苗字言わねぇでみことですって言っちまえ」
「い、出水先輩…!それは流石に失礼になってしまうのでは…」
「相手が怒る様な奴なら俺が守ってやるよ!」
「こ、心強いです…!」
太刀川隊に馴染めるか、心配していたが出水がよく面倒を見てくれている様だ。
みこと君も、無意識かもしれないが隊室に入ってきてからずっと出水のそばに居る。懐いているのだろう。
「あ、それと、名前の件は祝いにならないから焼肉行こうな!」
「や、焼肉ですか…?」
「忍田さんの奢りで!」
「え、え、むしろ皆さんと一緒に過ごせるだけで嬉しいので…!お金はクソ…父のお金を使わせてください!」
…最近、みこと君の父親への嫌悪が素直に表に出てくる様になったなぁ…。
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アップルパイになりたい(プロフ) - 更新待ってます! (2023年1月30日 15時) (レス) @page46 id: fcb69bf060 (このIDを非表示/違反報告)
例のやつ - 面白くて腹筋痛い…続きをお待ちしております! (2021年11月7日 21時) (レス) @page46 id: 5d3b9960b6 (このIDを非表示/違反報告)
そらちゃんです!!(プロフ) - 応援してます! (2020年6月19日 10時) (レス) id: c4f3cb5b0b (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 面白すぎて1話から一気読みしちゃいました!笑 更新待ってます!頑張って下さい! (2019年11月2日 17時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ豆(仮)(プロフ) - 更新待ってます! (2019年5月11日 22時) (レス) id: 97b4437434 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんにゃくの様な何か | 作成日時:2019年3月11日 18時