13話 ページ14
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条野は事務員の方を向き、声を掛けようと思ったが止め、大人しく部屋の中に入っていった。部屋の中は至って普通の部屋だった。少し広い空間にトイレがあり、机があり、布団がある。ただ一つ異常だとすることがあれば、
---部屋の天井四隅から機関銃と監視カメラがぶら下がっていることくらいだろう。---
条野が辺りを見回し音を聞いていると微弱だが心音が聞こえてきた。数日前に聞いたあの音だった。
「七種Aさん、でしたっけ」
何の音もしないその空間に条野の声だけが響き渡る。そしてその声に答えるように返事がかすかに聞こえた。
「はい」
条野はその声を頼りに近くまで寄る。彼女は扉から一番離れた部屋の隅に膝を抱えて座っていた。返事はしたが、顔は下を向いたままだった。
「...お久しぶりです」
「...うん」
そしてこの状態の彼女を感じ取って理解した。自分は隊長と坂口の話が終わるまでこの者のお守りをしろ、ということなのだと。
「(全く...)」
内心呆れつつ彼女の近くに腰を下ろし、もう一度話しかけてみる。
「此処に来てから、調子はどうです?」
「...生きてる」
ちゃら、と鎖の音がした。音の方に手を伸ばすと彼女の手には少し長めの鎖が付いた手錠が掛けられていた。それは足にもつけられていた。
彼女の首にはまた違った物が取り付けられており、心臓の動きや体温、体の状態などが逐一本部のとある者たちに届くように作られたものだった。
「首の、苦しくありませんか」
「...慣れてる」
条野の質問に少し間をおいてから答えていた。声が出しにくいのかと思ったがそうではないらしい。それにしてもだ。
「(慣れてる、ねぇ...)」
Aが犯罪組織に誘拐される前、特務課によって管理されていたことは条野も知っていた。
不意に条野がAの首に手を伸ばし、髪をかき分け、首につけられている機械に触れる。首に掠ったのか彼女の躰が少し揺れた。
「(無理に外そうとしたら首ごと吹き飛ばす気ですね、コレ)」
少し触っただけで分かったのは『猟犬』にいたときに身につけた知識なのかはたまた違うところで身に着けたのかは分からない。
そして条野は首から手を引くとあることを提案した。
「時間もありますし、少しお話しませんか」
「...うん」
Aは小さな声でその提案を承諾した。
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作者から
Aがいる部屋は文スト単行本17巻冒頭で虫太郎君が入っていた部屋みたいなのをご想像ください。
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さくら(プロフ) - 続きが楽しみです!いつでも待ってます! (9月21日 21時) (レス) @page17 id: 02ee107128 (このIDを非表示/違反報告)
あいちゃん - 続きをゆっくり待ってます!そして主人公はぜひ幸せになってほしいと思いました……! (8月21日 13時) (レス) id: 5236d3cbfa (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - ぽっぽさん» コメントありがとうございます!頑張って更新させていきますのでよろしくお願いします!!! (5月13日 23時) (レス) id: 95070418c3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽっぽ - 続き待ってます!更新大変だと思いますが頑張ってください! (5月13日 8時) (レス) @page2 id: 550fd98a77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫陽花 | 作成日時:2023年5月7日 19時