21話 ページ22
夜。月明かりが花畑を照らす。
「満月だね。」
丸い月が今にも落ちてきそうだ。
「絶対に約束して欲しいことがあるの。」
私はカーズの手首をつかみ、強引に小指と小指を絡めた。
「なんだ、これは。」
不思議そうにそう聞きながらも彼は小指をほどかない。
「まず1つ目は、何があっても絶対。太陽の下に立てるようになること。」
それを聞いたカーズは眉を下げ、困ったように笑う。
「何を今更、元々そのつもりだぞ。」
「もうひとつあるの!もうひとつはね。」
今になって言うのが恥ずかしいような、もどかしいような気持ちになって私はモジモジしてしまう。
「私の事なんか忘れてね。」
言ってしまった。なんて自惚れた発言だろうと自分でも思った。
こんなことわざわざ言わなくても、カーズは100年ちょっと一緒にいただけの私の事なんてすぐ忘れるだろう。
「努力。はするぞ。」
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「カーズ昔一族と暮らしてた時、好きな子とか彼女とかいたの?」
いつかの何気ない日。気になってカーズに問いかけた。
「過去のことなど、どうでもいいだろう。」
わたしにはAがいるなんて言って、猫のように頬をすりすりしてはぐらかすカーズにイラッとした。
「いいじゃん、別に聞いたって。」
ムカついたように言い放つ私を見て、カーズは答える。
「そりゃあなあ。12万年生きていたのだ。だが彼女はAが初めてだな。」
研究の邪魔だの、思想が合わんだの。
見ればわかるが、わたしはかなりモテたのだ。なんて言い出したから余計に腹が立って、私に寄りかかるカーズを押しのける。
「嫉妬か?かわいいなあAは。安心するがいい。一族はもう仲間以外はおらぬからな。」
そんな事を冗談めかしく言うカーズは何とも言えない空気を纏っていた。
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「私、カーズに最後を見届けて貰えるなら別にいいや。」
なんだかこれまでの楽しい思い出が頭を巡り、死への恐怖も薄まっていった。
「私のいた集落ではね。死んだ人は星になるんだって。だから私のことは心配しないで。」
黙りこくったカーズは私を花畑からすくい上げる。
「A。俺は、いや。わたしはAが生まれ変わって星になっても必ず見つけ出してやる。」
まっててくれ。なんて言うカーズを見ていれば笑ってしまった。
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アリア(プロフ) - 🧚匿名の妖精🧚さん» 凄く嬉しいお言葉ありがとうございます!励みになります泣 (2022年8月27日 1時) (レス) id: f64b65ece4 (このIDを非表示/違反報告)
🧚匿名の妖精🧚 - 泣きました……今まで読んだ小説の中で1番感動しました… (2022年8月21日 18時) (レス) @page24 id: f6acac5c42 (このIDを非表示/違反報告)
アリア(プロフ) - 匿名初心者さん» わー!ありがとうございます!!頑張って書くので是非楽しんでください!!!! (2022年6月29日 19時) (レス) id: b3bfab64d6 (このIDを非表示/違反報告)
匿名初心者 - 柱…求めてました……大好きです…ッ! (2022年6月29日 14時) (レス) @page8 id: 8195809f5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アリア | 作成日時:2022年6月28日 22時