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「……そうです。私は社長を殺してなんかいません。むしろ社長を殺した人が許せません。社長はシングルマザーの私をいつも気遣ってくれて、息子のことでいつも相談に乗ってくれて。今朝だって息子が逆上がりできるようになったから、その話をしたくて……」
金子さんの目から涙が零れる。
社長さんのことを慕っていたと感じた。
その気持ちにきっと嘘はない。
肯定しておいて、俊くんたちにあんなことを言っといてなんだけど、私に聞こえてくる心の声も完全に信用はできない。
心の声でも嘘をつくという高度なことをしてる人もいるからだ。
でも今はこの方を信用しておこう。
そうすればこちらを信用してくれて教えてくれるかもだから。
「鹿戸社長に恨みを抱いていそうな人物に心当たりはありますか?」
「そんなの社長のドラ息子しかいないだろ」
「息子さんがいらっしゃるんですね」
「ああ。息子の将一。近所では有名な不良だよ。20歳超えてもフラフラしちゃって社長が頭を抱えてたよ」
「今その人いますか?」
「大会議室で待ってるんじゃない?」
そんな息子だったらさもありなん。
動機はいくらでもありそうだ。
「あとはいらっしゃいます?」
「あとはねえ……でもこれ関係あるかね」
「何でも思いついたことはおっしゃって下さい」
「うちに須貝真子って若い事務員がいるんだよ。年はあなたと同じくらいかな。まあ美人さんで皆から可愛がられているさ。社長も一目置いてたね。仕事ぶりはいまいちだけど。それで、将一も真子に言い寄ってたね」
まあ一応話は頭に入れておくかと思っていたところで。
「A、聞こえる?そろそろ金子さん返してもらいたいんだけど」
ドア向こうから俊くんの声がした。
「ごめんなさい。もう平気。……お話して下さりありがとうございました」
「こちらこそ話を聞いて下さりありがとうございました」
金子さんの後に続いて女子トイレを出る。
金子さんは大会議室に戻っていく。
トイレの前にはガヤさんもいた。
ガヤさんって耳が良いんだよね。
「ガヤさん今の聞こえてました?」
「もちろん。金子さんあんなに話してくれるとは。俺たちには全然だったから」
「さすがA」
「……思ったんだけど、俊くんの力で今犯人は分からないの?」
俊くんは心の声を聞けるんだから可能なんじゃないかと思うんだけど。
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真衣 - はじめまして。いとこ同士って結婚出来ないと聞いた記憶があるのですが、出来るんでしょうか?PS昔(1996年頃)、少女漫画雑誌・りぼんでよく似た設定(探偵では無いですが。作者:池野恋先生 おしえて菜花)があったことを思い出しました。 (10月21日 19時) (レス) @page50 id: 29eac809bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年3月15日 15時