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「北やんもAも平気?」
「俺は何度も経験してるけど、Aは遺体を生で初めて見るだろ」
「今はびっくりした方が勝ってる」
さっき見たことが自分にどう残るかはまだ分からない。
私的に感情がダイレクトに伝わる生身の人間の方が個人的には怖いかもしれない。
「俊くんもさすがに亡くなった方の心までは読めない?」
「さすがにね。人間亡くなったら感情だって死んじゃうんだよ」
「そういう人もいるんだろうけど」
「でも大半はそれを謳ってるだけの人間の方が多いかもね。だって死人に口なしだし、だったら生きてる人間の解釈を思う存分入れられるじゃん」
そう言うみっくんはどこか遠い目で窓を眺めた。
「北やん」
「みっくん」
ほぼ同時にみっくんを呼ぶ。
多分俊くんと思ってることは同じこと。
(そう。北やんはまた亡くしてるわけだから……)
俊くんの心の声が入ってきた。
「何よ、いとこども。……この能力の嫌なところは見た物が一生消えないってことよ」
「うん、だよね」
「だけどもう慣れた。嫌な物を見た分、良い物を見ればいいだけ。それだけで人の心は壊れない」
多分みっくんはもう色々見てきたのであろう。
そしてその度に乗り越えてきた。
この人は強い。
私はその一助になれたらいい。
「絶対俺はこの事件解決してやる。絶対に俺が導いてみせる。だから宮っち手を貸してくれ」
「もちろん。今回はどう動く?」
「なるべく今回は俺が動きたい。だからニカ千や横尾さんは今回控えで。玉には調べて欲しいところが出たら頼む」
「私は?」
「Aは俺と一緒に行動して欲しい。で、誰かの心の声が聞こえたら俺に教えて欲しい」
「分かりました」
「服部さんは何かを調べてたんだ。でもその対象がそのことに気付いてあの人を殺したんだ。……絶対許さねえ」
みっくんからは憤怒のエネルギーを感じた。
その感情にまた中てられる。
「A、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「Aは感情をダイレクトに感じちゃうからね」
「なんかみっくんの感情って伝わりやすい」
「北やんは素直なんだよ」
「それどういう反応すればいい?」
空気が少し柔らかくなる。
そのときガヤさんから連絡をもらい私たちは現場に残った。
ご遺体は既にどこかへ運ばれていて、でも事件の空気が色濃く残る現場に足を踏み入れる。
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真衣 - はじめまして。いとこ同士って結婚出来ないと聞いた記憶があるのですが、出来るんでしょうか?PS昔(1996年頃)、少女漫画雑誌・りぼんでよく似た設定(探偵では無いですが。作者:池野恋先生 おしえて菜花)があったことを思い出しました。 (10月21日 19時) (レス) @page50 id: 29eac809bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年3月15日 15時