Episode10 【宏光side】 ページ10
今日こそは…。
そんな思いで店の前に立つ。
初めてこの店で彼女に会ったあの日から、俺は2回ここを訪れたけれど、あいにく彼女に再会することはできなかった。
その間にもライブツアーの打ち合わせやリハーサルが始まり、5月から6月にかけては、名古屋を皮切りに福岡、大阪と各地を訪れていたので、なかなか頻繁に店に足を運ぶことができなかったのだ。
「三度目の正直、だな」
戸を開ける前、願いを込めて呟く。
しかし次の瞬間、(いや、二度あることは三度ある、とも言うな…)という思いが頭をかすめ、落胆しそうになる。
とにかく意を決して引き戸に手をかけ、勢いよく右に滑らせた。
その瞬間、カウンターに彼女の姿を見つけた。
(よっしゃ!)
思わず小さくガッツポーズをした。
「あら、いらっしゃい」
春子さんがカウンターの中から笑顔を向ける。
軽く会釈をしながら店内を見回すと、珍しく他に客の姿はなく、カウンターの彼女しかいないようだった。
「ほら。何ボーッと突っ立ってんのよ」
「あ、すいません」
慌てて後ろ手に戸を閉めると、俺はカウンターへと歩を進めた。
彼女は文庫本を読んでいて、俺のことには全く気づいていない様子だ。
「あの〜」
自分でも情けないくらい小さくかすれた声が出た。
案の定、彼女はそんな俺の声に気づくことなく、ページをめくる。
「あの〜!」
腹に力を入れてそう言うと、彼女の肩がビクッと震え、そしてゆっくりと振り返った。
「あなたは…!」
彼女は俺の顔を覚えていたようで、あ!というような表情で呟いた。
「あの時は本当に…」
改めて頭を下げようとした俺を、彼女は手で制止した。
「もう頭を下げたりしないでください。もう十分、謝ってもらいましたから」
彼女はそう言うと、ふわりと微笑んだ。
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SaYaKa(プロフ) - yndreamv0mm0vpqさん» コメントありがとうございます!!たくさんドキドキしてもらえるように頑張ります^ ^ (2018年8月2日 7時) (レス) id: d50237b6e9 (このIDを非表示/違反報告)
yndreamv0mm0vpq(プロフ) - 今後の展開がすごく気になります。2人はどのようにして再開し、恋に発展して行くのか。ドキドキ。楽しみにしています。 (2018年8月1日 18時) (レス) id: 59b8f94fa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SaYaKa | 作成日時:2018年7月31日 1時