Episode6 【宏光side】 ページ6
「ったく…何やってんだよミツ！あの人がすげーいい人だったからいいけど、そうじゃなかったら大変なことになってたぜ」
カウンターに腰を下ろして改めて焼酎の水割りに手を伸ばすと、二階堂がわざとため息をつきながら言った。
「俺だってマジで焦ったよ。あの人に申し訳ないことしちゃったな…」
言いながら先ほどまで彼女が座っていた席に目をやると、椅子の下に何かが落ちているのが見えた。
拾い上げると、彼女が先ほど濡れたスマホを拭くのに使っていたハンカチだった。
それは水色の小さなハンカチで、よく見るとたくさんのクラゲが描かれていた。
「どうした？ミツ」
二階堂の声に「いや、何でもない」と答え、俺はそのハンカチをズボンのポケットに無造作に突っ込んだ。
「ただいま帰りましたよぉ〜っと」
程よく酔っ払って帰宅すると、そのまま全部服を脱ぎ捨てて熱めのシャワーを浴びた。
バスローブ姿でキッチンに立ち、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出すと一気に飲み干す。
「くぁ〜生き返る〜」
一人暮らしの部屋に、虚しいほど声が響く。
その足で脱衣所に戻ると、溜まった洗濯物をどんどん洗濯機に放り込む。
さっきまで履いていたズボンを手にした時、ポケットからはみ出しているハンカチに目が止まった。
「あ…そういえば…」
ポケットから引っ張り出し、彼女のことを思い出した。
大衆食堂のような店で、客の大半は男(というよりおじさん)という中に、１人静かに食事する彼女の姿が、俺は初めから気になっていた。
春子さんや大将の様子から、常連ではなく初めて訪れた客のようだった。
店のテレビを見るとき、注文をするとき、何かにつけて彼女をチラリと伺ってみると、何となく横顔が悲しそうで、さらに気になった。
「大丈夫だったかな…スマホ…」
何度弁償すると言っても、彼女は大丈夫だと言って受け入れなかった。
人見知りなのか、目すらほとんど合わないまま、彼女は店を出てしまった。
「…ていうか、名前も聞かなかったな…」
ハンカチを見ながら呟くと、俺はそれを洗濯機に入れ、スタートボタンを押した。
翌日。
仕事前に洗濯機を開けると乾燥まで終えたハンカチを取り出す。
リビングに戻り、数年ぶりにアイロンを出すと丁寧にハンカチにアイロンを当てた。
「よし。こんなもんでしょ」
アイロンの電源を切ると、俺は丁寧にハンカチをたたみ、バッグに入れて家を出た。
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SaYaKa(プロフ) - yndreamv0mm0vpqさん» コメントありがとうございます!!たくさんドキドキしてもらえるように頑張ります^ ^ (2018年8月2日 7時) (
レス) id: d50237b6e9 (このIDを非表示/違反報告)
yndreamv0mm0vpq(プロフ) - 今後の展開がすごく気になります。2人はどのようにして再開し、恋に発展して行くのか。ドキドキ。楽しみにしています。 (2018年8月1日 18時) (レス) id: 59b8f94fa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SaYaKa | 作成日時：2018年7月31日 1時
