キミのとなり 【Hiromitsu.K】

Episode8 ページ8

「やっと１週間終わったーーー！」

例年より早く梅雨が明け、７月初旬だと言うのに真夏のような暑さが続く日の金曜日。

デスクのノートパソコンの電源を切って、大きく伸びをした。

「お疲れ、A。今日も例の店行くの？」

「うん♡１週間頑張ったご褒美だから。ユウキは今日も残業？」

「まあね。私もAと飲みに行きたーーい」

「ライブが終わったら連れてってあげる！私のオアシスに」

「金曜日のオアシスかぁ。いいなぁ。楽しみにしてる」

そう言ってブルーライトカットメガネをかけ直すと、ユウキは再びパソコンに向かった。

(頑張れ)

心の中で彼女にエールを送り、私は足取り軽く会社を後にした。

「こんばんはー」

「あらAちゃん。いらっしゃい」

「今週も来ちゃいました」

すっかり顔なじみになった大将と春子さんに挨拶をして、私はカウンターの右端の席に腰をおろした。

「Aちゃん、飲み物はいつものでいい？」

「はい！あ、あと枝豆とだし巻き卵、それからとり大根もお願いします」

「はいよ〜」

春子さんの気持ちいいほど明るい声が店内に響く。

初めてこの店を訪れてから約１ヶ月。

毎週金曜日になると、仕事終わりにここに来るのが私の楽しみになった。

寡黙でほとんど声を聞いたことがないけれど、とっても美味しい料理を作る大将と、明るくおしゃべりが好きでお客さんからとても愛されている春子さん。

２人の醸し出す雰囲気はとても温かく、美味しい料理はもちろんのこと、そんな２人の人柄やお店の雰囲気の虜になってしまった。

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