※第2話 ページ4
×
スコッチがNOCだと気付かれた詳細は漠然としていて、とても要領を得られるものではなかった。
しかし少しでも疑わしい、と思われてしまえば有無を言わせず始末するのが組織の方針。
不幸中の幸いか。
現在、スコッチを追っているのは同じくNOCのライ。
FBI捜査官 赤井秀一。
黒いニット帽に鋭い目付き。
尋常ではないほどのスナイパーとしての才能。
頭の回転の早さも折り紙付き。
FBIきってのキレ者と称されるほどだ。
彼の作戦はーー
自分がFBIの捜査官であることを話し、説得を試みる。
その後スコッチの死 体を偽装し、組織の目を欺き、諸伏景光を救出する。
彼に任せておけば、最悪の事態は回避出来るだろう、と思考を巡らせた。
それでも拭いきれない不安と焦燥。
悪寒から身体が小刻みに震え、額に汗が滲む。
身体の震えが指先に伝わり力が抜ける。
キーを叩くことすら億劫になる。
ギリッ、と唇を噛み締めれば下唇から僅かに溢れた血液。
口腔内に滑り込み、鉄の味が広がった。
血の付着した唇を袖口で拭い、再びパソコン画面と向き合った。
「どのみちスコッチは死んだ事になる」
'なら俺がするべきことは決まっている'
素早くキーを叩き、景光のパソコンにハッキングを仕掛ける。
いくつもの回線を経由していく。
'秘匿' '写真'
と名打たれたフォルダを自分のパソコンへと移し、それぞれUSBに保存する。
中身を確認することはしない。
俺が見ていい物では無いと解っているから。
これを渡す相手は諸伏景光本人。
あるいは・・・。
ぱしんーー
静まり返った空間に響く乾いた音。
泥沼に嵌まりそうになる思考を振り払うように、両頬を叩いた。
「沈んでる場合じゃないだろっ」
気合いを入れ直し、残りの作業に取り掛かる。
データを全て回収した後、痕跡を一つ残らず潰していく。
最後にパソコンを起動した瞬間にオシャカになるように特製のウィルスを忍ばせた。
全ての作業を終え、緊張を解すように深く息を吐き出した。
「上手くやれよ、ライ」
天井を仰ぎ、祈るように呟いた。
×
167人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時