※第3話 ページ5
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あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか?
膝を抱え蹲る俺の手にはスマホが握り締められたまま。
強く握っていたらしく、元々色素の薄い肌は更に血の気を失くしている。
気の遠くなるような一分一秒。
ライに起こされたのは、昼過ぎ。
それから作業をこなし、気付けば窓から射し込んでいた陽の色は闇夜を引き連れ、僅かに橙を残すだけになっていた。
Pirrr....
静まり返った空間に響き渡った電子音。
勢いよく顔を上げ、握り締めていたスマホを相手を確認することなく耳に当てる。
「救えなかった」
告げられた言葉が脳内で反芻する。
同時に全身の力が抜けた感覚に目眩がした。
「・・・そう、か」
僅かに震えた声音。
処理の追い付かない脳にライの言葉が流れ込む。
FBIだと明かしたところで背後から階段を駆け上がる足音。
すぐに最適解を導きだしたスコッチはライの拳銃を使い、左胸を撃ち抜いた。
そうすれば、たとえこの場に組織の人間が来たとしても、ライがNOCだと疑われることはない。
'あの人らしいな'
頭の片隅に浮かんだ言葉。
彼の唯一誤算だったのは、扉を開けた人物が組織側の人間ではなかったこと。
'もし俺が死んだら、コイツのこと頼んだからな?'
褐色の肌に金髪、青目。
バーボンこと、スコッチと同じ公安の潜入捜査官。
降谷 零。
その人だった。
淡々と紡がれた詳細。
呆然とライの言葉を聞き流すことしか出来なかった。
「すまない」
やりきれなさの滲むライの一言に何も返せないまま通話が切れる。スマホを握る手が力なく床に下ろされた。
ライの言葉を信じない訳じゃない。
それでも確認せずにはいられなくて、紅い瞳でスマホを見下ろし、掛け慣れた番号へと一縷の望みを託す。
ツー、ツー、と不通を告げる音。
何度かけても結果は同じ。
バリンッーー
苛立ちを露にし、スマホをパソコンの画面に叩き付けた。
液晶の破片が辺りに散乱する。
「っ、死んだら許さないって言っただろ」
塞き止めきれない想いは悲痛な叫びとなって、暗がりの部屋に溶けて消えた。
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時