※第1話 ページ3
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Pirrr....
Pirrrr......
閉ざされたカーテン。
閉めきられた薄暗い部屋の中。
くるまった毛布の中から腕を伸ばし、頭上で喧しく鳴り響くスマホを手繰り寄せた。
暫く昼夜逆転の生活を送っていた理玖には、今が朝なのか、昼なのか、はたまた夜なのか検討もつかない。
しかし仕事用のスマホが鳴っている以上、無視するわけにもいかない。
重たい瞼を擦り、紅い双眸が映したのは画面に表示された『ライ』の文字。
理玖は嫌そうに眉根を寄せ、スマホを耳に当てた。
「・・・何か用?」
寝起き特有の掠れた声音。
くぁ、と大きな欠伸を溢し、背を伸ばすとベッドから這い出た。
「随分と寝ていたものだな」
呆れを含んだライの言葉に、少なくとも昼は過ぎていそうだな、とぼんやりとする思考を巡らせる。
ガチャリ、とノブを回し開いた扉の先。
リビングの中央には1台の大きなパソコン画面。
電源を入れ胡座をかくと、キーボードを膝に乗せた。
青白い光は寝ぼけ眼には刺激が強く、思わず目を細める。
「で、何?依頼?」
問い質すも返答はなく、何なんだ、と怪訝そうに首を傾げた。
互いに一言も発さず、沈黙が続く。
何かが'おかしい'と脳内で警鐘が鳴り響いた。
「っ、なぁ。さっきから何で黙」
「スコッチがNOCだと、組織が気付いた」
その言葉に目を見開いた。
霧がかっていた思考が徐々にクリアになり、顔から血の気が引いていく。
「・・・嘘だ」
「悪いが、冗談で言うほど性質(タチ)は悪くないと思っている」
まだ少しばかり状況が飲み込めず呟けば、ライの苛立ちと焦燥を含んだ声音が脳に響いた。
「ブラッディ。君は彼がNOCだと知っていたな」
「っ、俺が組織に情報を売ったって?」
「可能性の話をしたまでだ」
ライは俺を疑っている。
身体が小刻みに震え、カァッと頭に血が昇る。
'ふざけるな'
喉元まで出かかった言葉を唇を噛み締め何とか堪えた。
ざわり、と肌を駆け抜ける悪寒。
早鐘を打つ胸の鼓動。
乱れる呼吸。
「すまない」
スマホを通して伝わったであろう浅い呼吸音に、ライは何かを察したらしく、それ以上は口を閉ざした。
「いや、いい。ライの仕事は疑うこと、だろ」
そして俺の仕事はーー
瞼を閉じ、胸に手を当て深く息を吐き出した。
徐々に落ち着きを取り戻す鼓動に、安堵の息を漏らした。
瞼を開き、パソコン画面を鋭い眼差しで見つめる。
「今の状況を詳しく教えてほしい」
カタッ、と無機質なキーの音が室内に響いた。
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時