53話 ページ5
沢村「A先輩……」
『ん?』
いつものように栄純と昼食を食べる。
ここ最近は栄純がイップスにかかり若干気まずい雰囲気だった。
もちろん今日も。
しかし、今日は少し違うようだ。
沢村「俺、戦力外……ですよね。」
『なんでそう思うの?』
沢村「ブルペンにも入れてもらって無くて……監督にボールに触るな、走ってろって言われました。」
『だから戦力外だって思うの?』
沢村「はい……」
『そっかぁ。栄純はそう思ってるんだね。』
沢村「じゃあ、A先輩はどう思ってるんすか!?俺、これからどうすれば……」
『私はね、栄純がイップスになった事はチャンスだと思うんだ。』
沢村「ちゃ、チャンス?」
『そう、チャンス。』
一也も言ってた通り、イップスなんかに負ける栄純じゃない。
だからこそアウトコースや変化球、バッティングなどの今まで出来なかった事を試すチャンス。
『野球っていうのはピッチングだけを言うんじゃないでしょ?』
沢村「それは俺にピッチャーを諦めろって事ですか……」
うわ、栄純ガチへこみだ。
言ってもない事を解釈し始めてしまった。
『違うよ。今の栄純に足りない物、沢山あるんじゃない?例えばバッティング。栄純はバント上手いけどそれ以外はダメダメ。』
沢村「!」
『野手も下手っぴじゃない。それにね、ピッチングはインコースだけじゃない。他にもいろいろあるんだよ。』
『兎に角、栄純は弱い。でも、弱いっていう事はこれから強くなれる。成長できるんだよ。だからチャンスじゃない。』
沢村「先輩……ありがとうございますっ」
『何泣いてんのよ、男でしょ?はい、ハンカチ。』
沢村「すびま"ぜん……」
『ほら、ご飯食べよ。昼休み終わっちゃうからね。』
沢村「はいっ!あの俺いつも先輩に励まされたり、アドバイス貰ったりしてて……本当にありがとうございます。」
『いいのよ。栄純に元気になって貰えれば。』
前、礼さんが栄純をスカウトした時確かこう言ってたはず。
「チームを思う気持ち、そこに真のエースを見た」
最初はなにそれとか思ってたけど栄純に関わる内に礼さんが言ってる事がよくわかった。
『だから元気出してっ!私のお弁当あげるから。』
沢村「いいんすか!?」
『うん、今日は力作っ!』
ああ、栄純が成長した姿でマウンドに立つのが待ち遠しいな。
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作者名:のこのこきのこ | 作成日時:2016年3月16日 20時