Lillyの王様 ×five×《ars/s.s》 (ページ1)

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Episode26 Lillyの花束ページ1

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「あ、悪い電話だ」

いつものように柚木のキッチンカーでホットコーヒーを二つ注文したところで翔さんがそう言ってスマホを手にする。

「出てください」

「悪いな」

少し離れたところで翔さんが電話をし始めたのを見ると雅紀くんが私の方へとカウンターから身を乗り出した。

「で、櫻井さんの誕生日会はどうだったわけ」

「誕生日会って…お食事しただけだよ」

「そうそのお食事はどう？盛り上がったの」

盛り上がった、という表現は正しくないと思うけど、私はこくりと頷く。

ちらっと翔さんを盗み見たけど離れているから多分聞こえてなさそうだ。

「うん。お料理も美味しかったし、夜景もきれいだったよ」

「夜景…なんともベタだなぁ…でも美鈴そういうの好きだもんね」

「好きだね」

思い出しただけでも頬が緩む。

イルミネーションなんかもそうだけど、ああいった光の景色が私は好きだ。

偶然かもしれないけど翔さんが用意してくれたそれは同じ光の景色の中でも特別だ。

「A、幸せそうだね」

「あ…」

雅紀くんが優しく微笑む。

くしゃっと目じりにしわが刻まれて、そんな様子はやはり兄を彷彿とさせる。

「……そうかな」

そうだね、って言うのはちょっと恥ずかしくて。

そんな風に濁してみる。

雅紀くんはみなまで言うことなく「そうだよ」と言いながらホットコーヒーをふたつ私へと差し出した。

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