11.信じたい確かな音 ページ11
*
イタイだろうか。
いや、構わない。
丁寧に書いた"4時、教室に来てください"の手紙を、少女漫画みたいに彼女の下駄箱の中に置いた。
来てくれなかったら、なんて心配はない。
来てくれる、その思いを強く持ったまま静かになった教室で4時まで待つ。
……まだ靴の音がしない。
耳を澄ませても一切しない足音に、少しずつ不安の感情が襲いかかってきた。
大丈夫、そう唱えながらもちょっとだけ震える手を両方重ねて、ひとつ息を吐いた。
.
時計の針は、4時を過ぎた。
来ないってことは、もう、
じんわりと視界が歪み、頬に流れた涙がカッコ悪すぎて、急いで拭くと涙のせいで光って見える夕日。
Aも、この夕日を見ながら耐えていたのだろうか。好きな人が来ない、この苦しみを。
そう考えたらチクチク痛む胸を抑えて、がたっと椅子を引き立ち上がる。
時間は十分にあった。だけど、来ないってことは……そういうこと。
なら、明日からまた振り向かせるため頑張ろう。
荷物を持って教室を出ると、さっきまで聞こえなかった靴の音がだんだんと近寄ってきた。
……期待しても、いいのだろうか。
ゆっくり振り向いた先、いたのは、確かに走ってきたせいで髪の毛が崩れてしまってる愛おしい人。
「ごめん、っ、我妻くん、遅くなっ、」
『Aっ……!!』
嬉しくて、荷物を投げ捨てて彼女の元へ飛び込んだ。
少しだけきつく抱きしめたけど、彼女は、ふっと笑い、"そんなんされると、無駄に期待しちゃうよ"と呟いた。
あの時と同じ。
弱くて、小さい声。自信の無い声。
……今度こそ、伝えるんだ。
今度は、俺が隠してきた気持ち、全部。
『誰よりも、好きだ』
炭治郎に負けないぐらい
君以上に好きと思える人は、いないぐらい
それぐらい、大好きなんだ。
「っ、私の気持ちは、我妻くんにとって、邪魔じゃない……?」
弱くて脆い君を、守りたい。
『邪魔なわけない、なんなら……僕の方が想い強すぎて、迷惑になるかもしれないけど、』
『僕と、もう一度、付き合ってくれませんかっ?』
72人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凪 - 面白かったです! (2020年2月1日 22時) (レス) id: b575dccd32 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 超苦しい!なんかやっぱりきゅうってする!…炭治郎ぅう!私は好きだゾォォオ!! (2019年12月23日 1時) (レス) id: bbe87bcae1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふわふわべあー。 | 作成日時:2019年12月7日 21時