メリーゴーランド【うらたぬき】

八周目 ページ9

「…ん、着いたけど…大丈夫？」








折角早くに家を出たというのに、学校に着いたのは登校完了時間の10分前で。









ほんとは渉も急ぎたいんだろうに、まだ泣き止んだばかりの私に歩調を合わせてくれた。









『うん…ごめんね、結局学校遅れちゃって』









「そんなのいいって、Aこそ遅れたんだから一緒だろ？」









遅刻じゃないし大丈夫、なんてへらりと笑う渉に、心臓がとくんと鳴る。









あぁ、やっぱり好きだなぁ。









このまま2人の時間が止まればいいのに、なんて考える私は、やっぱり欲張りなんだろうか。









『じゃあ、そろそろ行くね、』









「あ、待って」









渉がぎゅ、と私の制服の裾を掴む。









…引き止め方可愛すぎません？女子ですか。









「あのさ、やっぱり俺、Aのことほっとけないから…明日も一緒に登校しても、いい？」









『ぇ、』









驚きすぎて、ぽかんと渉を見てしまう。








「さっきみたいなこと、またあったらやだし、…Aが良ければ、だけど」









珍しく弱気な渉に、咄嗟に言葉が出てこない。









わかってる。私が危なかっかしいから、心配してくれてるんだ。









わかってる、けど。









『よろ、よろしくお願いしますっ…！』









ちょっぴり、ほんのちょっぴりだけ、期待してもいいですか。

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