メリーゴーランド【うらたぬき】

十八周目 ページ19

「っと、とりあえず！薬飲まないと治んないんだから、飲めっ」









ぐいっ、乱暴に手に乗せた錠剤を近づけてくる渉。耳が赤い。









…照れ隠し、って、流石に私も気づいてしまう。









可愛い、って言っただけで照れるなんて、渉ってこんなに照れ屋だったっけ。









『…飲み、たくない』









目の前の白い塊から視線を外して、私は言葉を零した。









だって、これ、絶対絶対飲み込めない。飲み込んだとしても、確実に苦い。









「……ったく、」









呆れたように、渉が錠剤を私から離した。









「…どうしても、飲めない？」









『…うん、絶対飲めない』









念を押してくる渉に少し疑問を抱きながらも、私は"絶対"を強調して言った。









高校生がそれほどまで薬を飲みたくないっていうのもどうなんだ、ってちらりと思ったけど、飲みたくないものはしょうがない。









「………………わかった」









渉が腕を下ろす。諦めてくれた、みたいだ。









ほっとしたのも束の間、なんと渉は、手にした薬を自分の口に放り込んだ。









え、と声を出す間もなく、水も少し含んだ渉はつかつかと私に歩み寄ってきて。









────顔が、近づいてきた。

十九周目→←十七周目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す