メリーゴーランド【うらたぬき】

十七周目 ページ18

「っあった！薬！！」









どんどんどんばたんっ、階段を駆け上がってきた音とドアを開けた音がして、部屋に渉が入ってくる。









手には風邪薬があって、見つけたことが嬉しかったのか、顔は少し緩んでいる。









…小学生みたい。可愛い、なんて思ってしまう。









「A、薬あったんだけど、飲める？」









ぱち、薬の包装を解いて、渉が手に乗せた錠剤を私の顔の前に持ってくる。









…ぅ、薬、か。









「……ぁ、もしかしてA、まだ薬嫌いなの？」









『っ、』









渉、覚えてるんだ。私が中学生の頃、錠剤が嫌で嫌で飲めなくって、お母さんを困らせたこと。渉は隣で「だっせぇ」って笑ってたっけ。









「っっは、おまっ…まだ飲めないとか、まじかよ……っ！」









ツボに入ったのか、薬を手にしながら高い声でげらげら笑う渉。









『ぅ、るさいなもう……！』









とにかく恥ずかしくって悔しくって、私は渉をきっと睨む。









「ゃ、だってっもう高校生なのに、だろ？はっはは、可愛いなお前！！」









『…ぇ』









目に涙を溜めながら笑う渉の口から、『可愛い』って言葉。









「あ、」









渉も気づいたのか、はたと笑いが止まる。









「…あー、違う、から。違うって言うか、うん、違うからな」









顔に手を当てて、渉が私から視線を外す。心なしか、頬が少し火照っている。









『ぅ、ん』









そういう意味じゃない、よね、わかってる。わかってる、のに。









なんだか嬉しくって、薬飲めなくて良かったかも、なんてオーバーなことを考えてしまう。

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