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...
「だから、本当にありがとう。これだけは、言いたかったんだ」
「A...」
その瞬間、独歩はAに歩み寄り腕を伸ばした。彼女を抱きしめたくなったのだ。今までの彼女の苦しみや悲しみ、寂しさを全て受け入れてやりたかった。消えてしまいそうな彼女を、強く抱き締めたいと、独歩は思ったのだ。
しかし、伸ばした腕は空を切った。
Aが存在しているはずの空間を、独歩の腕がすりぬける。
まるで投影された映像のように、Aに触れることは叶わなかった。
「...幽霊だからね、実体がないの。」
「そ、そうか...でも、」
悲しげに言ったAを、独歩は優しく包み込んだ。お互いの感触は無いが、それは確かに抱擁であった。
Aは一瞬驚いたが、直ぐに独歩の胸に身を預けるような体勢に落ち着いた。
「なんか、変な感じだな」
「ふふっ...抱きしめてるっていう事実が大事なの!」
涙声でAが笑った。
2人は暫くの間そのままの体勢でいた。何も喋らなくとも、不思議と居心地が良く感じられた。
...
22時をまわった頃、ふいにAが歩き出した。独歩もその後を着いていく。
まるでよく知っている場所かのように、彼女の足取りはハッキリとしていた。
「どこへ行くんだ?」
「綺麗な場所」
綺麗な場所とは、なんなのだろうか。独歩は疑問に思いつつ、悪い足場に気を使いながらAの1歩後を歩いた。
暫くした頃、開けた場所に出た。
1本の大木を中心に開けた広場を周りの木々が覆い囲んでいるそこは、まるでドームのようであった。
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紺(プロフ) - kai_0998さん» 分かりみがフカヒレ (2019年12月8日 11時) (レス) id: c01d9ddcd5 (このIDを非表示/違反報告)
kai_0998(プロフ) - 紺さん» コメントありがとうございます。独歩にはどうしてもメリバエンドを迎えて欲しい気持ちがあります... (2019年12月8日 1時) (レス) id: 8c34b5ee67 (このIDを非表示/違反報告)
kai_0998(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます。褒めていただいてとても嬉しいです!楽しく読んでいただけたなら本望です...ありがとうございました (2019年12月8日 1時) (レス) id: 8c34b5ee67 (このIDを非表示/違反報告)
紺(プロフ) - 独歩おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ (2019年11月30日 12時) (レス) id: c01d9ddcd5 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - すっごい感動しました!この作品を作ってくださってありがとうございます! (2019年11月29日 16時) (レス) id: 6cdcbd2af6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kai_0998 | 作者ホームページ:http://id52.fm-p.jp/649/kieyuku/
作成日時:2019年11月28日 22時