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ヒロミツで頭いっぱいなのに藤ヶ谷さんがグイグイ私の心に入ってきて
･･･処理し切れない。
ヒロミツを忘れたくないっていう戸惑いと
藤ヶ谷さんに心も体も侵食されてしまいそうな恐怖。
藤ヶ谷さんにこのまま甘えてしまおうと一瞬でも心許したくせに１度ヒロミツに抱かれてしまうともう誰にも触れて欲しくなかった。
それなのに
それでも私の体を後ろから包んで抱き締めてくる藤ヶ谷さんの肩が少しだけ震えてる事に気付いて
･･･やっぱり傷付ける事しか出来なかったって後悔する。
「ごめんなさい･･･。」
謝るしかないよ。こんなに私の事想ってくれてるのに応えられないなんて。
「･･･マジでムカつくよ。」
弱々しく呟いて
「でももう少しだけ、こうさせて？」
抱き締める腕の力が強くなった。
･･･この腕の中にいる事を選べば幸せになれるの？
でもやっぱり無理なんだよ。
ヒロミツの事、終わったとはいえすぐ気持ち切り替えるなんて出来るはずない。
藤ヶ谷さんは健人とは違う。
本気の想いには本気じゃないと向き合えないんだから。
「Aちゃん？オレしつこいの。知ってるだろ？」
強く抱き締められたまま震えた声で
「今は無理でもオレ、ずっと待ってるから。」
今の私にはこうして想ってくれる人がいる。
･･･それだけで強くなれる気がした。
「ありがとう･･･。」
そう伝えたらまた涙が零れた。
・
２年後
主演映画の完成披露試写会。
恋人同士の役を演じた私と太ちゃんが舞台の中央に立つ。
沢山のフラッシュを浴びながら
にこやかにカメラに視線を送る。
不意に太ちゃんの顔が近付いて耳の後ろで囁かれた。
「そろそろ本物のオレの彼女になってくれない？オレ本当の彼女だと思ってこの役演じたんだけど。」
そう。
あれからすぐ太ちゃんとの共演が決まって仕事での付き合い以外でも一層親しくなった。
でも太ちゃんがあれ以来私に何か言って来る事はなくて。
でも時折見せる太ちゃんの私への視線がまだあの時のままだっていうのは気付いてた。
人見知りの太ちゃんが私だけに見せる顔に少しドキッとしたり。
元々気が合う友達みたいな関係だったんだもん。気を許す事は簡単だった。
役の中で恋人を演じる事もすんなり入り込めた。
初の主演で、しかも相手は太ちゃん。
プレッシャーは大きかったけど太ちゃんと一緒だから演じきれたんだって本気で思う。
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作者名：Haru
| 作成日時：2018年2月25日 21時
