君のその手に ーspinoff ー 桐谷麗華の恋。【完結】

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でも、カウンターの隣りに座る北山くんは
薄暗く青白い照明の中で更に魅力が増す。



目に見えないよくわからない気持ちのザワつきを誤魔化すように目の前のお酒を口に運んだ。





「･･･色っぽ、」



私を見る切れ長の目からつい目が離せなくなりそうだ。
そして、この声は媚 薬のようにお酒が入った私の耳に響く。





「いい加減そういう事上司に言うのやめなさいよ、」




そう。そして、彼の言葉を間に受けずに
しっかりと茶化さないといけないんだから忙しい。





「でも、桐谷部長、ちょっと俺の事いいなー、とか思ってきたでしょ？」


「思ってません。」


「嘘だ。だってめちゃくちゃ今可愛いから。」




･･･え？




「会社でもどこでも見た事ない顔、してますよ、今。」




どんな風に北山くんに映ってるんだろう。
物欲しそうにしてないか、怖くなる。



すると、くくっと笑ったかと思えば冗談っすよ、なんて言うから体の力が抜けたわ。





「からかうのやめてよね。」



はぁ、と自然に大きく息を吐いた。


そんな私の事もまた、北山くんは優しい目で見てくるんだ。



結局仕事の話をしたり
なんて事ない話しをするんだけど
北山くんは終始私を見つめてきてはたまにふっと切なげに視線を逸らす。



勘違いしそうになる、彼の表情や憂いのある目はハッとする程色っぽくて私はもう彼の顔を直視することが出来なくなっていた。




だからそろそろ部屋に戻ろう、と言えば
彼もそうですね、と最後の最後、事務的な返事をするから名残惜しさを隠すように席を立った。






それなのに






「あ、コンビニ行きません？水買っとかなきゃ、」





とか白々しくまた誘ってくるあたり、彼はいったい私をどうしたいんだろう？



いつもは部屋に備え付けの冷蔵庫の中を利用するんだけど
きっとコンビニより値段がだいぶ高いはず。



小沢がいない今、そういうのも悪くないな、と思い直して北山くんに付いてく事にした。



当たり前のように私と手を繋いでくる北山くんの手を振りほどける程、もう理性は働いてなかった。




ホテルを出てすぐのコンビニ。




日本と同じような作りではあっても品物は初めて見るものも多くて新鮮だ。




「俺、タバコも買うんでちょっと待ってて下さい。」



店員さんにタバコの銘柄を懸命に伝えてる所が微笑ましい。



自分の買い物は終わったから少し風に当たって待っていよう、そう思って外に出た時だった。

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