カラフル←←

※ ページ16

顔を上げて北山さんを見ると優しげに微笑んでた。




「ばかやろ、今生の別れ、みたいな挨拶すんじゃねーよ。」




言いながら椅子から立ち上がってコーヒーを飲み干した。




「まぁ、ちょっと俺ら気、合ったじゃん？好きだったよ、成瀬と飯食うの。おまえ酒も強いしさ？また元彼に内緒で美味い店にでも連れてってやるよ。」





あ、元彼じゃねーな。今彼か。って言い残してじゃあ、仕事すっかーっていつもの調子で先に出て行く北山さんを見送る。





･･･またご飯、誘ってくれるんですね。




次に行く時はちゃんと後輩として
先輩を立てますから。
私、かなり生意気でしたよね、すみません。





いつになるかわからないその時を楽しみにしていよう。







なんだか気負ってただけに
やけにあっさりとした返しの北山さんに肩透かしだけど
気を使わせないようにあえてこうしてくれたのかなって思うとまた胸が熱くなった。






「いただきます。」




北山さんから渡された缶コーヒーのプルタブを開ける。



ミルク入り砂糖なし。



それはいつも私が給湯室で淹れて飲んでるものだから缶コーヒーのこれは実は初めて飲む。



給湯室の備え付けのコーヒー豆とはまた違う香り。



しばらくはこの缶コーヒーを目にする度に
今日のこの事を思い出すんだろうな、って思った。







一つの大仕事を終わらせた気分でフロアに戻る。



嫌でも北山さんに視線が向いてしまうけど
北山さんはいつも通り、パソコンとにらめっこしてて、当たり前の光景にほっとするのはおこがましいだろうか。



デスクに戻るとすぐに最近では通常になってた
北山さんからの、なるせ〜っていう呼び声。




だいたい用事なんてなくて
冗談半分、本気半分の口説き文句を聞かされる為だけに呼び出されてたから、さっきの今で戸惑ってしまう。




「･･･はい、」



どんな顔していいかわからずにデスクに行くと




「ちょっと呼んでみた。これで最後。」




わりーなっ、て諦めたように笑った北山さんに
目頭が熱くなったけどすぐ、困ります。っていつもの調子で返す。



私の言葉に可笑しそうに笑う北山さん。



以前のそっけない関係に戻るんじゃない。



私には心強い先輩が出来た。








・

※→←※

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す