年上の彼女 short story 【完結】

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だったのに。




こうして他人になった今。




いつも酔っ払って俺の家に来るAさんは
兄貴といた時よりも数段気が抜けてて大人な印象からは程遠い、子供みたいな姿を俺に晒してくる。





本性はこういう感じ？




兄貴の前で、もしかしてめちゃくちゃ気を張ってたのかもしれない。



こっちのダメダメなAさんはまだ見慣れないけど
そんなギャップを見せられたらなんていうか、ちょっと愛しい、とか思っちゃうんだけど。




ダメなんだって
こんな気持ち持っちゃ。
兄貴の元嫁だぞ？




そう思うのに彼女の為にいそいそと着替えを出してバスルームに向かうよう背中を押してしまう自分。



そんな俺に満足げに微笑んで、ありがとって何の遠慮もないAさんは、ほんとに今までと全然違う、別人のようにも見える。









｢･･････どっちが本当のAさんなの？｣




風呂上がり、無防備に濡れたままの髪で
冷蔵庫を勝手に開けてビールを取り出してるAさんの後ろ姿に問いかけてみる。





すぐには答えないで、ゆっくりとソファの左側に座る俺の右隣へと座った。




プルタブを開けてごくごくとビールを飲み込んでからようやく俺の顔を見た。






｢自分でもわかんないんだよね。ただ、渉といるとこうなっちゃう。こうなっちゃう事がわかったから、あの人と離婚したの。｣



｢は･･･？俺のせい？｣



｢渉のせいじゃないよ。私が今までずっと自分の気持ちに蓋してただけ。｣








ちょっと待って。
それはまずいだろ、
兄貴がどれだけAさんに入れあげてたか知ってるだけにこんな事って･･･？





｢こんな私、渉は嫌だよね？｣




酒に飲まれた潤んだ目。
無茶苦茶だらしない女なはずなのにその色気にドキッとした。




｢好き。渉が｣




・・・・嘘だろ？
それで毎回同じベットで寝たがってたって訳？
それってもうアウトなんだけど。




｢･･･やめろって、｣



本当はめちゃくちゃ狼狽えてる。
でも理性をなんとか保って冷静に、言えた、はずだ。




今の俺、どう見えてんだろ？
なぜか俺の顔を見て、ふふっと笑ってから





｢だよね。わかってる。ほんとはこんな所にいちゃいけないしこんな事言っちゃいけないって。だからね、いっその事渉に嫌われたくてこんな飲んだくれてるのかも。｣




･･･嫌われたくてその行動なら絶対間違ってる。
だって俺は今の無防備なAさんの方がいいって思っちゃってるんだから。

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