折れた翼【ハイキュー!!】

＃３８ ページ38

『ネットのこっち側全員、もれなく味方なんだよ！』


『下手くそ上等！迷惑かけろ！足を引っ張れ！それをおぎなってやるための、チームであり、先輩だ！！』


田中さんの言葉が、頭の中で反響する


裏表ない、真っ直ぐな言葉は、捻くれた私に強く突き刺さった


その言葉をもっと早く聞きたかったと、自分が言われたわけでもないのに気分が沈む


「桧山？」


はっと顔を上げた


「大丈夫か？」


菅原さんが、心配そうに私を見つめた


「すいません、ぼーっとしてました」


タオル、預かりますね


そう言って、菅原さんからタオルを貰い、清水さんの元へ向かう


間も無く、第2セットが始まった


日向と影山の速攻もあり、1セット目とは打って変わって、接戦だ


日向がスパイクを打ち、日向が囮になる


影山が正確なトスを上げるから、日向が思い切り打てる


今はそれでいい


けど、いずれそれでは足りなくなる


影山に頼るだけでは上手くいかなくなる


私は、目の前で繋がれるボールを目で追った


試合が進み、相手チームがタイムをとる


集合した選手にタオルとドリンクを手渡し、コート内に残る日向を見た


澤村さんと少し話して、日向はパタパタと戻ってきた


「日向」


名前を呼んで、ドリンクとタオルを渡す


「ありがと、桧山」


「どう？練習試合は」


日向はタオルで汗を拭う手を止め、言った


「なんか、変な感じ・・・変に意識しなくても、ちゃんとプレイできてる」


自分の掌を見つめ、そう言った


「そっか」


日向の頭をぐしゃぐしゃと掻き乱す


「そのままでいいよ」


「え？」


「・・・何でもない」


ドリンクとタオルを受け取り、コートに戻るよう促した


試合再開


接戦ながらも、確実に点を稼いでいる


まぁ、月島と影山がいがみ合っていたり、色々ないこともないんだけど・・・


そして、烏野(うち)のセットポイント


日向のスパイクが、相手コートに叩きつけられた


2セット目は烏野が奪った


コートから、選手たちの喜ぶ声が聞こえた


「向こうに、影山みたいなサーブ打つ奴いなくて、よかったですね」


セット間の休憩で、縁下さんがそう言うのが聞こえた


「あぁ。烏野(うち)はお世辞にも、レシーブ上手いとは言えないからな」


澤村さんがそう返す


それは、私も見ていて感じていた


今後の課題はそれだろう


「油断ダメです」


影山が、汗を拭いながら言った

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