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『円堂……!』

大神が円堂に傍に駆け寄った時には、既に立ち上がっていた。

1度は右手で立とうと地面に手をついたが、たった一瞬だけ顔を顰めたのを見逃しはしない。立ち上がり方を見るに、右手を挫傷したようだった。

『円堂!君ッ、』

「ナイスファイト、大神!惜しかったなぁ!」

不安そうに円堂を見やる大神に、円堂は笑いかける。痛みを感じているだろうに、表情にはそんな素振りは見せない。

『……ありがとう。円堂も、ナイスファイト。』

笑顔に何も言えなくなってしまい、大神は円堂に投げようとしていた言葉を呑み込んだ。それに、何を言ってもGKは円堂にたった一人しかいないのだから、彼に頼るしかないのだ。

1人でベンチに向かう円堂の背中を見送り、大神はそれに続いてベンチへと足を進める。遅れて来た大神に音無が駆け寄り、ドリンクボトルを渡した。

「はい、大神先輩!ドリンクお持ちしましたよ……どうかしましたか?」

ドリンクを手に持ったものの、身長差があるにしても目が合わない大神に音無は首をかしげる。そのまま呆然とどこかを眺めまま、暫くして大神はやっと反応を見せた。

『……音無さん、悪いんだけれど救急箱の用意をしてほしい。』

「えッ、怪我を……?はい!すぐに持ってきます!」

『あ、音無さん。』

「ッはい?」

慌てて前のめりに駆け出す音無を呼び止め、大神は困ったように笑った。

『焦って君が怪我をしないでね。ドリンク、渡してくれてありがとう。』

「あはは、いやぁ、すみません……気をつけます!救急箱をすぐに取ってきますね!」

そう言って音無は先程よりも背筋を伸ばし、急ぎ足で駆けて行く。

大神はドリンクの飲み口に口をつけた。

「豪炎寺、染岡、半田、大神!お前たちのさっきの攻め、すごく良かったぞ!」

ベンチで皆が水分補給をしている中で、円堂の目は先程攻め入った4人を映して目を輝かせた。興奮した様子で口を開く。

「得点係という大将を囲み、守りながら攻める事で鶴翼の陣を突破!まるで武田の知恵……先程の陣形、さしずめ魚鱗の陣と言ったところでしょうか!」

目金が軽く解説を挟むと、「武田ってあれだよね、すごい武将の人!」というように1部で少し盛り上がった。

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鷹羽(プロフ) - コメントありがとうございます~!!!好きと仰っていただけて感激です^^ノロノロペースではありますが、更新させていただきます! (2021年7月15日 18時) (レス) id: 338e0ddf16 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだない - コメント失礼しますm(_ _)m 主人公の設定とかめちゃくちゃ好きです!!鷹羽さんのペースで頑張ってください!更新待ってます! (2021年7月14日 19時) (レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年3月30日 1時

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