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しん、と静まり返ったスタジアム。既にそこには誰も居ない。居るのは、たった1人でグラウンドの中心に立っている大神だけ──彼は目を閉じ、グラウンドの芝を揺らす風を感じている。

ふと、微かに1つの足音が鼓膜を揺らした。大神は閉じていた目を開き、振り向けば足音は止まる。

『……土門くん。』

視界に映りこんだのは、アメリカ帰りでついこの間まではスパイとして雷門中サッカー部に忍び込んでいた土門。帝国戦では雷門イレブンとして尽力し、今では円堂の隣を走る仲間だ。

「お疲れ様です。」

土門は頭の後ろ手腕を組むと、人の良い笑みを浮かべた。つられて大神も笑みを浮かべ、土門の方へと歩みを進める。

『もう、皆はバスへ?』

「いいえ、バスはまだすっからかんですのでご心配なく!俺は、貴方が1人でいたので理由も無く此処へ。」

『そうかい。』

大神の短い返事で会話が終り、沈黙が辺りを支配した。絶えず吹き続ける緩やかな風が、建造物にぶつかり、芝を揺らし、唯一その場で音を奏でている。

暫くして、土門が口を開いた。

「鬼道さんから聞きました。記憶、少しだけ戻ったんですね。」

『……ああ。少しだけだけれど、確かに。』

大神は風を吸い込んで、一息ついて言葉を吐き出した。

『君の事も覚えているよ、土門くん。1年生の頃、随分と居心地の悪そうな顔をしていたね。』

「え、そんなに顔に出てました?」

『そうだね……出ていたかもしれないし、出ていないかもしれないな。』

「……どっちです?」

『さて、どうだろう……あははッ、出ていないよ。それそうと、思ってはいたんだね?』

「そりゃあ、帝国学園は蹴落とし合いというかなんというか……」

どうでもいいようなことを軽く小突きあって数分、土門はやけに真剣な面持ちで話題を変えた。

「あの、話変わるんですけど……大神さんはまだ全部の記憶を思い出した訳じゃないんですよね?」

『うん?ああ、そうだね……未だに分からないことだらけだよ。』

「……思い出したいと思ってます?」

『それは勿論。どうしたんだい、突然……土門くん?』

土門は腕を組んだまま、眉間に皺を寄せると黙り込んだ。何かを考え込んでいるようで、鬼道さんがどうとか、余計なことだとか、先程から何かを呟いている。

そして、意を決した様に息を吐いた。

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鷹羽(プロフ) - コメントありがとうございます~!!!好きと仰っていただけて感激です^^ノロノロペースではありますが、更新させていただきます! (2021年7月15日 18時) (レス) id: 338e0ddf16 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだない - コメント失礼しますm(_ _)m 主人公の設定とかめちゃくちゃ好きです!!鷹羽さんのペースで頑張ってください!更新待ってます! (2021年7月14日 19時) (レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年3月30日 1時

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