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『遅れました……あらら?』

電話が終わり、大神が部室に顔を出せば、積まれた一斗缶の上に壁山が立っていた……のだが、壁山の体重を乗せ続けて限界が来たようで、形は歪み崩れ落ちた。

「あぁ〜……

お、来たか大神!電話の内容は……っと、こっちで話すか!」

『ああ、風丸も少しいいかい?』

「俺か。わかった、今行く。」

「皆、練習始めててくれ!俺は少し話してくる!!」

円堂は部室に残るサッカー部にそう告げる。3人は人気のない場所に向かった。

「なんだよ、2人して。電話ってなんだ?」

『先程入院していた病院から電話が来たんだ、記憶が戻ったかどうかを確認する電話が。』

「え、病院?それで、なんて答えたんだ?」

『勿論、戻っていないと答えた。そうしたら提案されたんだ、カウンセリングを受けてみないかと。』

大神は1つ1つ、思い出すように呟く。

『僕の記憶障害は、生きてきた全ての記憶ではなく、部分的なものだ。これは事故が原因ではなく、何か強いストレスを受けた事によるものの可能性が高いらしい。』

「えっと、つまり……どういうことだ?」

「消えた3年の間に、何かあったってことだろ?」

『そう……3年間については、父さんも教えてくれないことだ。怖いけれど、知りたい。なにか得るものがあるかもしれないのだし、カウンセリングを受けてみようと思う。』

大神は円堂と風丸の肩に手を乗せると、俯いて2人を引き寄せた。2人は顔を見合わせて、大神の背中を抱える。

『だから、迷惑をかけるかもしれない。こんな時にごめんね、ごめん……どうか一緒にいてほしい、少し話を聞いてくれるだけでいいからさ。』

大神の弱々しい声に、2人はあやす様に背中を叩く。両者がそれぞれに叩くせいで、だんだんと音がズレていく。それでも大神は安心したように目を閉じた。

「今更何言ってんだ、俺たちの仲だろ?ドーンと来いよ大神!怖くなったら、一緒に楽しくサッカーするんだ!!」

「そうだぜ大神、気なんて遣うなよ。何も話してくれない方が傷つくんだぞ。それでサッカーして、雷雷軒で飯食って……あ、東も誘うか?」

『……はは、なんて良く出来た人間なんだ君たちは。ふふッ、ふ……そうだね、そうだ。

……うん、ありがとう。』

大神は立ち上がる。顔は晴天だ。

『よし、はやくサッカーしよう!打倒、野生中だ!!』

大神はその場から1番に駆け出した。円堂と風丸は笑いながら後を追いかける。

風は少年たちの背中を押した。

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作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年2月19日 3時

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