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「なぁ、大神。鉄塔へ行かないか？
アイツまだ特訓していると思うから、何か……」
『ん、買っていこうか。』
その日の練習が終わり、風丸は大神を呼び止めて鉄塔に向かう。案の定、円堂はいつも通りにタイヤと向き合っていた。
「やっぱりここに居たのか。」
「ん？風丸と大神……ぅぐッ！！」
勢いがついたタイヤは円堂の顔の側面に激突した。倒れ込む円堂を風丸と大神は起こして支え、ベンチへと座らせる。
休憩することにしたらしく、円堂はグローブを外した。手は無茶な特訓によって赤くなっている。
「練習、変えたのか？」
「ああ、次の段階さ！」
風丸は鞄から水を取り出して円堂に渡し、円堂の礼を言う声が響いた。話があるのは風丸で、大神は少し離れた位置で円堂が持ってきていたボールでリフティングを始める。
染岡が焦っていること。
豪炎寺の凄さに頼りたくなる後輩。
自分たちも頑張ろうと思う風丸の気持ち。
聞き耳を立てれば、そんな話が上がっていた。
「皆、今は豪炎寺さえ居れば簡単に勝てるって思い過ぎてる。サッカーは11人でやるってことを、忘れてるんだ。」
『……』
「俺、豪炎寺のことはもう無理に誘おうとは思ってないんだ。今の俺たちで強くなれたらって……思うんだ。」
円堂は困ったように、弱々しい声でそう言った。強くなれたら、と言っても曖昧で、何をすれば良いか迷っているように見える。
『その為には、部員のメンタルケアが必要だ。
ほい、パス。』
「あ、おう……うん。それはそうだけど……ただ、何て言葉を掛けたら良いか分かんなくてさ。」
『染岡くんと話してご覧よ、キャプテン。彼が焦っているのは目に見えているが、彼の気持ちを言葉で聞いた訳では無いだろう？』
今度は大神が話をする番だ。円堂と大神がパスをしながら話し合う姿を、風丸は黙って見つめる。
『彼自身の気持ちを、彼自身の言葉で聞いたなら……君が彼に掛けてやるべき言葉なんてすぐに見つかるさ。
染岡くんの焦りを前進する力に変え、染岡くんが行動に示すことで1年生たちからの信頼を高める。それが、今の僕らが強くなる為の、第1歩と言えるのではないかな。』
「……そうか、それもそうだな！風丸も大神も、ありがとう！俺、キャプテンとして頑張るよ！！」
「あまり気負うなよ、円堂。キャプテンと言っても、2年の俺達も居るんだからな。」
「ああ！！」
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作者名：鷹羽 | 作成日時：2021年2月19日 3時
