【忍たま】柑橘狂はトリップしても無敵Part3

103話:あーん ページ10

「……へっくしゅっ」


孫兵くんと朝ご飯を食べていると、くしゃみが出た。

「Aさん、風邪ですか？」

「いや、誰かが噂でもしてるんじゃない？」

「医者の娘にあるまじき発言ですね」

医者も最後は気力なんだよ、と言いながら孫兵くんの口にさじを持っていく。

「はい、あーん」

「………あの、Aさん」

「なに？」

孫兵くんに名前を呼ばれ、小首を傾げた。
孫兵くんは少し暗い顔をして私に言ってくる。


「………そのくらい自分でできるのであーんはやめてください」

「えぇー、さっきまで大人しく食べてたじゃん」

「言い出しづらいんですよ」

「もー、最近の子はタフだねえ」


私ははあ、とため息をつき、またあーんとさじを差し出した。


「……話、聞いてました？」

「聞いてた聞いてた。
でも孫兵くん可愛いからさ、つい餌付けしたくなるっていうか」

「ぼくは動物ですか……」

そう突っ込んだ孫兵くんは心なしか元気がない。

ああ失敗したなと、私はさりげなく話題を変えた。


「そういえば体調の方はどう？
昨日よりは顔色が良いけど、まだ関節痛いとかある？」

「いえ、結構よくなりました。
熱も下がってると思います」

そう言われ、どれと孫兵くんの額に手を当てた。

「ああ確かに。
これなら明日には完治したと言っても良いくらいだね」

あとは栄養不足を補うだけだねーと言い、さじを差し出す。

孫兵くんはしばらくそれを見つめた後、諦めた様な顔で口に含んだ。

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