【忍たま】柑橘狂はトリップしても無敵Part3

105話:お風呂 ページ12

「ぅ、うぅ……うぇ…」


私は現在、嫌がる孫兵くんの服を引っぺがして風呂に入れている。


孫兵くんは相当嫌だった様で、必死に股の間を隠しながら抵抗してきた。

しかし、病人相手に負けるような私ではない。

そこは速やかに風呂に放り込み、有無を言わさずお湯をかける。

とりあえず身体を洗ったところで湯船に突っ込んだ。

そして今、何か大事な物を奪われた乙女のように泣く孫兵くんをなんとか宥めているのだ。


「まーごへーいくん。
そんな泣くことじゃないじゃん」

「………うるさいです」

「ぶー。
ほら、頭洗うからこっち倒して」

そう指示すれば、顔を手で覆いながら湯船のふちに頭を乗っけた。

こういうとこ素直だなあ。


顔を手で覆っているので、遠慮なくお湯をかける。

栄養不足だというのに艶やかな髪の毛は肩先まで伸びていて、まるで女の子のようだ。


「Aさん、」

「ん？なに？

…へっくしゅっ」

髪の毛をくるくるいじっていると、孫兵くんが声をかけてきた。
鼻をずび、とすすりながら答える。

「…その、両腕の包帯って……」


ああ、これまた失敗した。

私は心の焦りがバレないようにへらりと笑い、なんでも無いと言った。

「左腕は昨日の…ね。

右腕はアオダイショウに噛まれちゃってさ。
いい経験したわ」

野生の蛇に噛まれた事なかったからねと言えば、孫兵くんは可笑しそうに笑った。


「ほい、終わったよ。
じゃあ出よっか」

「へ？」

湯船に手を入れ、孫兵くんの身体を持ち上げる。

急な事で驚いた孫兵くんはしばらく固まっていたが、慌てて前を隠した。

「ちょ、濡れる！服濡れますし自分で出ます！」

「まあまあ騒ぐな。
しんどくなるよ」

「今そんな場合じゃないです！」

「私次入りたいからお留守番してもらっちゃっていい？」

「そっ………それは、やーです…」

もちろん昨日の今日でそんな事しないが、思ったより静かになったのでびっくりした。


「じゃあ大人しくしときな」

そう言って孫兵くんを床に下ろし、手拭いを渡す。

「さすがに前は自分で拭いてね。
背中と髪の毛は私が拭くよ」

手元の手拭いで頭をわしゃわしゃ拭いてやれば、少し気持ち良さそうに目を細めて腕を拭きだした。




……身体中にある痣には、何も言わずに。

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