【忍たま】柑橘狂はトリップしても無敵Part2

86話:怒ってます ページ42

「傷はどこですか？」

「…左腕」

「どうして怪我を？」

「…カラクリ作ってる途中にヘマした」

「カラクリ、ですか？」

「天女様消すカラクリ」


おうふ、この子やばい子だった。


差し出された左腕の擦り傷を手当てしながら危機感を感じる。

いや、命狙われてんのは分かってたけどさ、こんなにハッキリ言われると涙が溢れるよ。

私の豆腐メンタル潰れるよ。


「え、と…あはは……？」

とりあえず笑ってごまかし、消毒した腕に包帯を巻いた。

そこで、喜八郎くんが口を開いた。


「兵太夫、怒ってる？」

「何がですか綾部先輩」

兵太夫くんは喜八郎くんを睨みながら返す。

喜八郎くんはそれに少し傷ついた顔をしたが、すぐに無表情に戻った。

「全部だよ、全部。

天女様に騙されたことも、君を傷つけたことも、今こうして天女様といることも。

懲りないやつって怒ってるんでしょ」

ぐりぐりと、本の表紙の角を指で弄(もてあそ)びながら言う。


…おい、本が傷むだろ。

「……ええ、そうですね。
とても怒っています」

兵太夫くんが喜八郎くんを見ずに言った。

「素っ気ないけど優しかった先輩が手鋤で殴ってきたり、1度埋められそうになりましたもんね。

なのにまた天女様といるなんて、ふざけてるんですか」


喜八郎くんは俯いて、顔が見えなくなった。

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