【忍たま】柑橘狂はトリップしても無敵Part2

83話:仲良くなれそう ページ39

喜八郎くんの危なさに身体を震えさせていると、ふと思った。


…そういえば、


「なんで私に敵意を抱かないの？」

「なんですか、敵意抱いてほしいんですか」

「そうじゃないけど…」

なぜ私を始末しようとせず、今も普通に会話しているのか。
それが密かに疑問だった。

喜八郎くんはんー、と唸ると、ゆっくり口を開いた。


「他の3人、いたでしょう。
あの人達はあれでも顔はいいので、天女様に気に入られやすいんです。

貴女もきっとそうだと思ってたんですけど、予想外どころか蛇以下だと言い切った。

その時の貴女の姿が、とても綺麗だと感じたんです」


「……よくそんなこっぱずかしいこと平気で言えるね」

ほのかに熱くなった顔を押さえながら言う。

ここの子は本当にませてるなぁもう。
将来が恐ろしい。


「ところで、君はなんで落とし穴？」

また手鋤？持ってるし…


若干呆れた目で見ると、喜八郎くんが先ほどよりも輝いた目で語ってきた。

「これはてっこちゃんといって、穴を掘るための道具です。
これでよく蛸壺や落とし穴を掘っています」

「……穴掘りが好きなの？」

「ええ、大好きです」


なるほどね、それで私を落とそうと…

私ははあ、と一つため息をつき、喜八郎くんを見据えた。


「本当は落ちたくないけど、君も諦め悪そうだしね。
いいよ、存分に落としにこい。

私も蛇と柑橘が大好きだからね、それに没頭する気持ちはわかる。

君とはいい友達になれそうだよ、喜八郎くん。
もし良かったらだけど、これからもよろしくね」

すっと手を差し出し、喜八郎くんの反応を伺う。


喜八郎くんは少し驚いた後、嬉しげな雰囲気で手を握ってきた。


「落とし穴に落としにこいなんて、初めて言われました。

こちらこそよろしくお願いします、Aさん」

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