検索窓
今日:2 hit、昨日:29 hit、合計:304,922 hit

74話:ハッチーパイセン ページ30

縁側に出ると、あれほど降っていた雨はすっかりあがっていた。

「ごめんね藤内くん、わざわざ付き合わせて」

廊下を並んで歩く藤内くんに、手を合わせて謝る。

「別にいいですよ、このくらい。
僕だってやりたくなかったら早々に逃げてます」

藤内くんはくすくす笑いながら答えた。


しばらく歩くと、井戸が見えてきた。

「よし、ここの水を汲めばいいんだね」

中々難しそうな作業に、藤内くんに教えてもらいながら水を汲み上げる。

このくらいあればいいか、という所で水汲みをやめた。


「藤内くん、そっち重いから持つよ」

2つに分けた桶の、量が多い方に手を伸ばす。

しかしその手は、何を掴むでもなく空を掻いた。

「いいです。
このまま筋トレにもなるし、軽いもんですよ」

どうやら藤内くんが寸でのところで桶を取り上げたらしい。

だが、付き合わせておいてそれは申し訳ない。

「いやでも年上だし……」

「いいですって。

僕だって男なんですから、女性に重い方を持たせることはできません」


ツン、と少し不機嫌になりながら先を行く藤内くんに、呆気に取られる。

ここの子はませた子ばかりなんだな……


私はくすりと笑い、藤内くんに追いつくべく駆け足で戻った。


しかし、それはひとつの呼び掛けによって歩みを止める。

「おい天女!」

「ぬおっ!何ですか?」

突然の呼び掛けに振り返ると、そこには今朝の傷んだ髪の毛少年。


同じく声に反応して振り向いた藤内くんがぼそりと呟いた。



「…………竹谷、先輩……」



その声は酷く冷たく悲しいもので、これは何かあるぞ、と胸騒ぎがした。

75話:縁側で話そう→←73話:行ってきます



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (159 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
164人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

河鳴(プロフ) - ヤシさん» これからもちょくちょくトトロ衆として出てくる予定w (2015年6月1日 20時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤシ - 河鳴さん» めちゃくちゃしっくりきたことが笑えたwww確かに大きさピッタリだよねwww (2015年6月1日 20時) (レス) id: e3e927854f (このIDを非表示/違反報告)
河鳴(プロフ) - ヤシさん» ほら、孫兵くん疲れてるからそっとしておいてあげて…wあの3人思い浮かべた時に出てくるのがトトロだったwwwトトロも3年生も可愛いからね、うん (2015年5月31日 19時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤシ - 河鳴さん» 思ったけど孫兵めっちゃ爆睡してるねwwwあとトトロで迷子組を表現するとかw上手すぎwwその上大中小ってwww (2015年5月31日 19時) (レス) id: e3e927854f (このIDを非表示/違反報告)
河鳴(プロフ) - 春神さん» わああぁ!ありがとうございます!3年生いいよね3年生。出番が多いのはただの贔屓です。上級生は好きだけど、ちょっと悲しんでるくらいがちょうどいいよね。これから忙しくなるけど、なるべく更新頑張ります! (2015年5月29日 22時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:河鳴 | 作成日時:2015年5月22日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。