【Q:K】完璧すぎる彼女はｰ4【all】 (ページ45)

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『いつもの席に座り、普段と同じように本を読んで。気持ちを落ち着かせようとしました。でも、中々そうはならなくて。少しイライラしたままでいた時に来たのが、河村さんでした』

河村「そう、なんですか」

『はい。後ろを向いていたので誰なのかは分からなかったのですが、貴方が僕の真後ろの席へ腰を下ろした時、何故か、とても楽になったんです。安心したというか、心が、軽くなったんです』

手元のカップを見つめていた大きな瞳が僕の方に向けられる。眉を少し下げて微笑む彼女、それを僕はただジッと見つめた。目を、離せなかった。

『まだ、挨拶もしていない。顔を合わせてもいない。双方のことを認知していないのに僕は、安心したんです。全く知らないのにそう感じるって、素敵じゃないですか？』

河村「そうですね」

そう返して僕は、彼女から視線を逸らす。

僕も、同じだった。

あの時の僕は自己嫌悪に陥っていた。オフィスへ行く前に荒ぶった気持ちを少しでも静めたくて、落ち着く為に行ったんだ。あの日、あの図書館であの席に座った時。いつもと変わらない同じ席の筈なのに、何故かすごく快適だった。
真後ろに人の気配を感じて。本来なら一人になりたいと思う筈なのに、彼女がいるということだけで、これまでどうしようもなかったイライラする気持ちが、楽になった。その日は仕事が捗って、体調も普段よりは良かった。

もしかしたらその時、既に僕は``桜舞A´´という人間に興味を示していたのかもしれない。

『....河村さん』

俯いていた僕の名前を呼ぶ声。引き寄せられるように顔をあげると、隣には心配そうな表情で僕を見つめるAさんの姿。出会った時とは違う、感情が素直に出て読み取れるようになっていて。脳内で考えている今もずっと彼女は、僕を捉えて離さない。

その真剣な瞳に、思わず息を呑む。

『そこにいるというだけで安心出来る人って、とても素敵だと僕は思うんです。だって、その人が自分の近くにいるから落ち着いていられる訳じゃないですか。そこまでその人に心を許せるって、余程の信頼関係がなければ無理だと思います』

河村「....」

『そこにいる。だから頑張れる、より良いものを提供することが出来る。正直、僕は河村さんがいてくれたから、幾つもの試練を乗り越えることが出来ました』

河村「ぇ....」

『本当ですよ？河村さんだけでなく、みんなも。僕が今ここにいられるのは、皆さんのお陰です』

僕に向けられる笑顔から、目が離せなかった。