174.待ってる人 ページ49
…ここはどこなんだろ。
真っ白でなんにも無い世界。
そこにいた。けれど、暇ではなかった。
“彼女”がいたから。
«ねぇ、今日は何の話をしてくれるの?»
そう問うと、笑いが返ってきた。
«そうねぇ…でもそろそろ、貴方は元の世界へ戻るべきかしら»
いつもとは違う返事。
«なんで…?私が居なくなったら、貴方は1人になっちゃうじゃない。1人は寂しいの、私知ってるよ»
そう言うと、再び返ってくる笑い。
«私は大丈夫よ、貴方が来るまでも1人だったし。それよりも、貴方を待っている人がいるのよ»
«私を、待ってる人…?»
首を傾げると、彼女が頷いた。
«貴方を大切に思って、ずっと待ってる人。何人もいるの、その人達のためにそろそろ起きてあげないと»
«…うん…。また、会える…?»
«えぇ、きっとまた会えるわ»
堕ちていく。
───────
蜂蜜side
『ん…』
眩しい。
うっすらと目を開けると、そこにまふくんがいた。
『ま、ふ…君、?』
長らく声を出していなかったのか、少し声が出しづらい。
ま「月弥っ!?起きたの…?あっ、ナースコール」
まふくんが慌ただしく動いている。
どうやらここは病院らしい。
軽く起き上がりそれを自覚すると、今までに起きた事が次々に蘇ってきた。
『っ…』
頭をおさえると、まふくんが大丈夫っ…!?と駆け寄ってきた。
それが嬉しくて、ベッドに座ったままきゅっとまふくんに腕を回す。
ま「ちょっ…か、看護師さん来ちゃうから…!」
『ふふっ…ごめん』
笑って離すと同時に、看護師さんが入ってきた。
異常がないか、とか軽く調べてまた病室から出ていった。
ま「────月弥」
振り向くと、まふくんが真剣な目をして私を見ていた。
ま「先に言わせちゃってごめん。僕…月弥の事が、好きだ」
『っ…!』
ま「こんな、頼りない僕だけど。これからはずっと守るから。
…僕と、付き合ってくれませんか」
泣いていた。
こんなに幸せな事があるのだろうか。
答えは勿論、
『…っはい、喜んで…!』
涙を拭い、笑う。
まふくんも笑って、次の瞬間まふくんに包まれた。
花瓶に飾られた、紫色の花が揺れた。
End
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作者名:月見だんご | 作成日時:2017年8月21日 23時