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41話 「どうか、安らかに」 ページ44

危惧していた「コレとんでも食材じゃね?」といったような食感の物はなく。本日も無事に味覚だけを味わって食事を終えた。週一くらいは俺が全部作ってもいいかもしれない。
ふと、これから先もある程度は一緒にいることを確定させてしまっている自分にちょっと面白くなって笑った。
すると俺を抱きしめて横になっていた理鶯が気になったらしく、寝転がったまま首を傾げている。それになんでもないと返したが………うん。

『えっと……ツッコむの遅くなって悪いんだけどさ、離れて寝ないの?』
「なぜだ?」
『暑くね?』
「Aは暑いか?」
『いや、俺はそうでもねえけど』
「ならば問題ないな」
『あぁ……んん?』

理鶯の凄いところは問題ないと言い切られるともう何も言えなくなってしまうところだ。別に強制されている感があるわけでもなければ、脅すような声色でもない。なのに丸め込まれる……といっては聞こえが悪いが、とにかくそんな感じ。

「明日も行くのか?」
『ああ、明日は午前中から二時間だけ。キヨばあが午後から用事あるらしい』
「丁度良かった。明日は小官の食糧調達の手伝いも頼みたい」
『午後からとかでもいい?』
「ああ。二時くらいからで構わない」
『了解!……ん、ふぁぁ……』

かみ殺そうともしなかった欠伸が盛大に出た。
目を数回瞬かせると、頭を撫でられる。ぐりぐりと胸板におでこを摺り寄せればちゅ、とリップ音が頭上で鳴った。

「朝は起こしたほうがいいか?」
『ん、頼んだ』
「頼まれた」

もう、ルールだなんだと言って自分の事を話す必要はない。
優しい腕の中でとろとろと眠りに落ちて行った。









規則正しい寝息を立てるA。顔にかかっている前髪をどかすと、くすぐったかったのか寝たまま少し笑んだ。
小官に対する警戒がほとんどなくなったのか、それとも元の性格がこちらなのか……まだ判断しかねるが、彼女の懐に入れてもらえたという嬉しさが募る。

「………愛らしいな」

手負いの小動物が懐いたような感覚だと喩えはしたものの、彼女をペットなどと同じように思っているわけではない。
きっと辛い過去を一人で戦い抜き、ここでもまた同じように一人で耐え忍ぶつもりだったのだろう。一人というモノは存外辛い。
………だからこそ、見ていられなかったのかもしれないな。
自嘲気味に笑って、再び彼女のつむじに口づけた。

「どうか安らかな夢を」

願うように囁き、自分も瞼を閉じた。

42話 「侵入者」→←40話 「好い人」



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カルラ - ゴファッ!! なんだこれは、、、、、 めっちゃいい! (2019年5月22日 16時) (レス) id: 92a66c530f (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - たぬきなたぬたぬさん» ありがとう……ございます……(´;ω;`)これからもよろしくお願いします! (2019年3月2日 13時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
たぬきなたぬたぬ - ほんとに.....なにこれ......すき.......。 (2019年2月26日 21時) (レス) id: 83afc62697 (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - だまこさん» 理鶯推しがここにwありがとうございますw (2019年2月18日 18時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
だまこ(プロフ) - 理鶯が1番好きなんじゃあ (2019年2月18日 17時) (レス) id: 3c83364c40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作戦隊長 | 作者ホームページ:tp://  
作成日時:2019年1月6日 21時

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