52話 ページ9
「家族は、私に日本でバスケを続けることを望みました。それは神様が私に与えてくれたものだから、なんてお父さんにも言われちゃって、そこまで言われたらついて行く、なんて言えないじゃないですか。」
愚痴を言うはずが何故か中学時代のトラウマを語っていたのは何故だろう。
あと、途中恥ずかしい事言った気がする。
今吉は途中、相槌を打ったりしながら最後まで話を聞いてくれていた。
「青峰や征十郎を否定したいわけじゃないです。でも、でもね、私は少なくとも試合を自分たちが退屈しないようになんて思わなかった。」
ただ、正々堂々と。
尊敬している先輩の顔に泥を塗りたくったから、全力で相手をしていただけのはずだったのだ。
「どこで、間違えちゃったんですかね……私たち。」
「天才なんて生き物は、良くも悪くも視線が集まりやすい。そりゃそやろう、誰もが望むもん持っとるのやからなァ。」
「!!そ、うです、ね。」
肩が揺れたことに気がついたのだろう。
今吉は、最後まで聞くように諌める。
「万人受けされるようなもんやけんやろ? せやけど、そないなこと言うたら人間誰もがそうや。全員に好かれる人なんておらへん。それと同じような物やと思うで、ワシは。」
少なくとも、チームメイトは今までのルナの努力を理解してくれているのだ。
ならば、負けたものの言い草など気にしなければいい。
所詮負ければ賊軍なのだから。
今吉はそう言いきった。
「勝てば官軍ってやつですね。」
「お、流石に知っとるな。」
「知ってますよー!これでも成績はそれなりにいいんですから!」
「前に青峰の勉強見てもうたことあるもんな。」
綺麗事を言うのでも、上辺だけの言葉で着飾るわけでもなくただ、感じたことを本心そのまま伝えただけに過ぎなかった今吉の言葉は、“同ポジションの先輩”というものにトラウマを持っていたルナを救った。
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作者名:りぃん | 作成日時:2019年9月23日 0時