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49話 ページ5
「二人とも初日突破おめでとう。明日も試合でしょう?今日はさっさとやることやって休みなさい。」
母は偉大というけれど、うちの母親を見ているとよく思う。
どれだけ身内が大変な状況でも私たちの部活での活躍を応援してくれている。気丈にふるまい弱いところを見せず、子供に余計な心配をかけないようにしてくれるのだ。
兄は、そんな母に似たのだろう。後輩たちにスタメンを譲っても妬みを表に出さず、あくまで先輩としてふるまう。
わたしにはきっとできない、持ち合わせていないその強さがうらやましい。
最近今までに増して調子がいい。それこそ試合中は感覚が研ぎ澄まされていくように感じることが多くなった。
だからこそ、思ってしまう。
―――本気をださなくても勝ってしまうのではないか―――
なんて。
「お兄ちゃん、入っていい?」
先に部屋に戻っていた兄を尋ねた。
決勝前にきくことではないのかもしれない。何を言っているんだと思われるだろうか。
それでも今じゃないと駄目な気がした。ここで聞かなくては、選手としての私が壊れてしまう。
「三年間、何を思って試合してきた?」
ああ、顔にめんどくさいって書いてあるね。うん、ごめんね。
自覚はしてるよ。
だから気にしない。
「なにっつてもなあ。勝つことと理念くらいしか考えてなかったぜ、試合中なんざ特にな。
帝光の理念は百戦百勝、勝つことだ。それを成すのが主将であった俺の役目で、これからのお前の役割だろ。一軍のスタメンである以上好き嫌いの感情だけじゃやっていけない。
今までの先輩たちが築いてきたもんを守って、繋いでいかなきゃいけない。ま、中学生に背負わせるようなものじゃねえなって、こう改めて口に出すと思うが…。
それでも、おれは帝光生であることに誇りを感じてるよ。」
難しかったか?なんて少し馬鹿にしたように頭を。
わしゃわしゃと撫でられる。
「わああ!?ちょっと、やめてよ!」
「おーおー、そんだけ威勢が良けりゃ大丈夫そうだな。
あと一日だけは最上級生じゃねえんだ、難しいことは考えなくてもいいんだよ。
笠松たちがいるうちに頼ってやれよ。それは後輩の特権だ。
んで、お前らが一番上になったときに、下の奴らにしっかりそれを伝えてやればいい。言葉でも行動でも方法は何でもいいんだ。」
「そ、っか、うん。ありがとう、お兄ちゃん。
お休み!」
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作者名:りぃん | 作成日時:2019年9月23日 0時