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ハゲ課長に仕事を押し付けられ毎度の如く残業中。
残業にしては多い仕事の量に辟易させられる。
長時間のデスクワークに凝った肩を叩いていれば、微かだけれど、ふわりと鼻腔を柔らかい花の香りが埋めた。俺の好きな香り。
『お疲れ様です、観音坂先輩。』
その声の方に振り向けば女神……じゃない、後輩のA。
「…あ、もしかしてAさんも残業を…?」
そう問い掛ければ俺はもう終わりましたよと返されて。
…まあそうだろうな。仕事の成績も着実に伸ばしてるみたいだし、理由はよく分からんがあのハゲ課長にも気に入られてるし、陰気な俺とは違って明るくて人当たりもいい。Aはもう帰るのか、と言うことは俺は今日も一人で残業か…。
悶々とそんな事を考えていれば書類の半分をAに持って行かれた。
……待て、書類の半分?
「……帰るんじゃ、」
『集中、ですよ。先輩。』
白く細い指を口元に当てて言われるものだから、素直に言葉を呑んでしまった。
そんな俺を見たAは満足げに口角を上げ、早速書類の処理を始めていて。
……自分の後輩に助けられるなんて情けないな、
ぱちん、頬を叩き俺も書類とパソコンに向き直った。
『……こんなに降ってたんですね、雨。』
全く気付かなかった、と隣でAは呆然としている。そんな顔も綺麗……とか言ってる場合じゃない。
「本当に…巻き込んでスマン……」
会社を出ればいつの間にか土砂降りで、最悪なことにどちらも傘を持っていない状況。昨日の夜あれほど一二三に注意されたのに。畜生。
とは言っても終電を逃す訳にもいかず、ここで止むまで待つのは無理そうで。
『どうしましょう、傘…。近くのコンビニまで走ります?』
案外大胆な提案に驚く。が、
「まぁそれ以外の方法も無いか…。」
Aが上着で包んだ鞄を頭の上に掲げたのを横目に、俺も鞄を犠牲に捧げる覚悟を決める。
近くの信号の光が青色に変わった瞬間、それが2人の走り出す合図だった。
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木乃伊(プロフ) - とっっても面白いです!更新頑張って下さい!! (2020年4月27日 2時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)
クレハ(プロフ) - はじめまして!クレハと申します!面白い作品ありがとうございます!さっそくなのですが、リクエストしてもいいですか?違法マイクで夢主君が幼児化するお話が見たいです!出来れば摩天狼でお願いします!! (2020年4月23日 22時) (レス) id: 7636715740 (このIDを非表示/違反報告)
蛇使い座(プロフ) - きゃあぁぁ!すごい一郎君と独歩君が可愛く見える……!!凄く面白いです!これからも頑張ってください! (2020年2月17日 18時) (レス) id: 760b5f712c (このIDを非表示/違反報告)
ヤト - 続きが気になります、更新楽しみにしてます。 (2020年1月8日 17時) (レス) id: bd201871c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絢鳩 | 作成日時:2020年1月7日 1時