【文豪ストレイドッグス】元.ポートマフィアの指導者 part 7

佰伍拾伍頁─白鯨内戦闘 4─ ページ20

「総重量2万9千トン。上空2キロから落すれば、TNT爆弾140トン相当のエネルギーが市街のど真ん中で炸裂する｣




大地はえぐれ巨大なクレーターを残し、地表はカーペットのようにうねってあらゆる建物をなぎ倒す。

後に残るのは完全な更地。


フィッツジェラルドの云う現実味を帯びていない、しかし限りなく現実に近いその光景は敦の心に大きな火をつけた。




「そんな非道...絶対に許されない｣

「秘訣その二、“他人の価値観に流されるな”。とはいえ君も俺も忙しい。端末を奪い合うなら簡潔に行こう｣




訝しみ首を傾げる敦に、フィッツジェラルドは部屋の真ん中寄りに置かれた椅子の上に制御端末を置く。

そして、後ろを向き窓の外を見つめた。




「三つ数えたら同時に走り、先に端末を手にしたほうが勝者｣

「！｣




突然発せられたフィッツジェラルドの思ってもいなかった提案に敦は驚く。


それもその筈だろう。

敦の異能は足を虎化させ、常人よりも素早く動くことが出来るのだから。


しかし彼の異能について敦はまだ何も知らない。

だがそれを踏まえても余り有るほどの自信を持っていた。




「君が勝てば白鯨を好きに動かせ。だが俺が勝てば、君は俺に服従し、捜し物を手伝ってもらう｣




1(ワン)、とカウントダウンを始める。

敦は突然のことに頭を悩ませる。

この勝負に勝てば無事にヨコハマの街を救うことが出来るのだ。


しかし......




「(どうする...勝負に乗って合図と同時に走るか？)｣




2(ツー)。

敦が葛藤している中、フィッツジェラルドは淡々とカウントダウンを続けていく。




「(いや────組合の口約束なんて信用出来ない！ 裏をかいて合図より前に奪い、そのまま逃げる！)｣




敦は意を決して足に力を入れ、思いっきり床を蹴った。

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