【カゲプロ】猫目の青年、拾いました。*１* (ページ1)

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１話｢出会いは夜の路地裏で｣ページ1

８月下旬のある日、ごくごく平凡な17歳の私･桐原Aはバイトを終えて私服に着替え、同じバイトの友達に手を振って家に向かっていた。
はぁ……今日は早く帰って寝ようかな、明日もバイトだし。
そう思いながら街灯が照らす夜道を歩き、ふと横の細い路地裏に目をやった時。私の足は止まった。

｢あれ……？｣

私は路地裏の奥の方にある横たわっている何かを見て、そう呟いた。それが気になった私は、ゆっくりと路地裏の奥に入っていく。
そしてそれの正体を見た瞬間、私は息を呑む。
――その人は唇や頬から少し血を出し、息を荒くして苦しそうにしていた。

｢……っ!?｣

怪我をしているその人は私の存在に気がついた瞬間、身体をビクリと震わせる。その人は黒い半袖パーカーに胸元がＶ字に開いたシャツ、青いズボンと黒いブーツ姿で、薄汚れていて所々服に穴が空いていた。

｢あ、あのっ……大丈夫ですか……？｣

心配になった私がハンカチをポケットから出し、その人の顔についた汚れを拭こうとすると、薄茶髪で猫目の青年は目を見開いて私の手をパシッ、と払った。

｢僕に触れないでっ!! こっ、来ないで……っ僕は、汚いから……!!｣

｢で、でもっ……怪我、してるし……｣

｢や……いやだ来ないで、ほっといてよ僕の事なんてっ……!!｣

そう言った青年は酷く怯えた表情で目に涙を浮かべてガタガタと震え、壁に手をつきながらゆっくりと立ち上がり路地裏から抜けようと足を引きずりながら歩き出す。
だが、青年はすぐに倒れ込んでしまった。

｢いっ……ッ｣

｢！ちょ、無理しちゃダメだって……って、あれ……？｣

私はすぐに青年の方に駆け寄り、そう言って抱き起こす。しかし先程のように反抗せず、その代わりに脱力していて目は閉じていた。
ま、まさか死んだ……？いや、でもまだ身体は少し温かいし……！

｢ど、どうしよう……あっ！｣

私はそう言って青年を背負って立ち上がる。
ここからそう遠くはないし、人目も少ないから誰にも見られずに行けるかも……！
そして私は異常に細くて軽い青年を、家まで運んだ。