【０】遠望の風音 [ｶﾉﾝ] ＊Prequel＊

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守護団体とは、隊士達がその立場を誇りに思い人々の安全と安心を守る者達の集い。
俺はそう思って今まで修練を重ね、ある程度の知識も積んで来たが。

そこに居座る隊士達は、備え付けのベッドで居眠りをするなり同士と駄弁るなり。
辺りに置かれた剣も最近手入れされていないからか、刃が傷んでいるのが見える。

真昼にも関わらず、どこから持ってきたのか酒を煽る者さえ居た。
また、これは他のどの屯所を覗いてみても似たようなものだった。



「(……普段は皆、こんなものなのか)」



少なくとも、今までの俺が守護棟で見てきた隊士達の姿はああではなかったが。
あるいは団長が目と鼻の先に居る手前、規律を正していただけなのかもしれない。

果たして、この都市は本当の意味で守られていると言えるのだろうか──。
守護棟へと戻る道を歩きつつ考えていると、ふと騒ぐような声が聞こえ顔を上げた。

見ると、世辞にも上品とは言えない服装の小さな子供と
一般男性が取っ組み合いをしているようだったが……。



「(……いや、強盗か!?)」



よくよく様子を窺ってみれば、
一般男性の方が子供の手から何かを取り上げようとしているようなのだ。

容姿からして、あの男性と子供は親子という訳ではないのだろう。
そう判断を下した俺はすぐさま駆け寄り、男性から子供を引き離した。



「街中で無駄な騒ぎを起こすな。面倒が嫌なら今すぐこの場から立ち去るんだ」

「…………チッ!」



引き離した直後、何かを言わせる隙を与えず、男を真っ直ぐに見据えながら告げた。

相手も始めはこちらを睨んでいたが、俺の出で立ちを見て立場を察したのだろう。
舌打ちをかましながらも、素直に忠告に従いさっさと遠ざかっていく。

そして、俺は周囲の状況を一つたりとも見落としてはいない。
近くに立ち、明らかにこの騒ぎを目にしていただろう隊士に向かって声を放つ。



「──何をしている!? 何故子供を助けなかったんですか!」



俺には間違った事など一つもやっていない自信があった。だからこそ言い放った。
だがどうか、言われた男隊士はこちらを見やっては鼻で笑って言葉を一蹴する。



「何を言っているんだ? ソイツはスラムのガキだ、何故助ける必要がある?」

「なに…………!?」

「今ここで助けようが助けまいが、放っときゃ直に死ぬ命だろうよ」



瞬間、虫唾が走るような心地を覚える──隊士の風上にも置けない奴め!

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