【０】遠望の風音 [ｶﾉﾝ] ＊Prequel＊

...俊傑なる刃... ページ14

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この手がしっかりと剣に馴染んだのは、もう何年と前の話だ。

守護団体･隊長の肩書きを持つ者の息子ならば、同じく守護団体の一員となる為に
剣を握って当然、周囲からそう思われている事に俺自身も何の疑問も持たなかった。

いつしか身に纏う事が多くなった鎧にも慣れて、それでも精進の日々は続く。


そして俺の下で十四の年月が過ぎ去り、直に十五の歳を迎えんとする頃。
十五歳、それが見習いの兵士が立派な守護団体の隊士の一人として認められる歳だ。

守護団体の一員となる事にも意義はなく、寧ろ誇りすらもって迎えんとしている俺を
父は心から喜んでくれて、──しかしその表情にはどこか陰りがあるように見えた。



『己の剣に我等の信念を宿せ』

『──我等の剣は、民の安寧のために。我等の誓いは己が意思の象徴なり』



父から新たに剣を授かり、簡単な儀を執り行う事で正式に守護団体の一員となった
十五歳の誕生日──プレゼントはその剣だった、という事になるんだろう。

これで俺は、人々の安全を守る為に
時として街の外に蔓延る魔物とも戦わなければならなくなったのだ。



『(…………さて、)』



また、正式に隊士となったその日の内に守護団体の様子を窺おうと
儀を終えた後はすぐに辺りを歩き回った。

この都市の中心には、守護団体が本拠地とする“守護棟”が存在する。


一階は一般開放された接客室、二階は我儘の絶えない貴族御用達の専用接客室。
三階が一般守護団員生活施設、四階が守護団長──父への謁見者の控室。

五階が団長との謁見の間、六階は貴族団員生活施設、七階が俺達家族の生活施設。
また、一階から繋がる通路を進んだ先の別棟に、膨大な情報が集まる資料庫が。

更に三階から別方向に伸びる通路の先の別棟には、隊士達の修練場がある。
──この通り相当の高さを誇る、都市のシンボルとも言える巨大施設だ。



『(ここが隊士達の屯所か)』



実家でもある守護棟内部の様子は、既に知り尽くしている。

しかし都市はあまりに広いので、守護棟から見て
東西南北の四か所にそれぞれ設置されている屯所には出向いた事がなかった。

何か大事が起これば、五箇所の内の最も近い場所から順に隊士が出向く手筈だ。


だが、屯所を置くにはこの都市は平和過ぎるのだろうか。
様子を見てみると、そこには俺の想像とはかけ離れた光景が広がっていた。

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