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私達の団欒場所である美術室に足を踏み入れると先輩達によって描かれた絵や作られた食器が目に入る。
やっぱり美術が得意な生徒が選択しているんだろうか綺麗な作品と取られた賞が綺麗に並んでいる。

「あのね黒田くん、卵焼き食べてほしくて」
今日作った卵焼きを黒田くんに食べてもらいたくて家庭科の先生に紙のタッパーをもらった。彼氏に渡すの?なんて聞かれてしまったけど全力で否定した事でさらに疑われてしまった。

「井伊達と仲良く作っていた卵焼きか」
なんだかいつもより棘のある言い方。
いつもの黒田くんなら何だかんだ食べてくれるのに。
確かに井伊くん達と作ったから心配があるのは分からない事も無い。でも黒田くんへの卵焼きだけは卵を割る所から焼く所まで全部一人でやったのだ。少しは信頼してほしい。

「あの大丈夫だよ?これ全部私一人で作ったしお腹の心配は要らないよ?」
「お前なそういう事では!いや、もういい」
黒田くんは何故か呆れた様にはぁっとため息をついて椅子に座った。
私の椅子まで引いておいてくれるのが紳士的でやっぱ狡いななんて思ってしまった。


「頑張って作ったからその、食べてもらいたくて」
「そうか、じゃあお手並み拝見だな」
黒田くんは意地悪くそう言うとお弁当箱に備え付けられていたお箸で卵焼きを半分にした。一気に食べるんじゃなくてこうやって食べやすいサイズにする所とか、ちょっとだけ育ちの良さを感じた。
黒田くんが口に持っていくまでの時間は長いようで短いようで、どちらか分からなかった。


「どうかな、口にあったかな?」
「うん、美味い。」
口をもぐもぐとさせながらそう言う黒田くん。
口にあったようで素直に嬉しい。
黒田くんが人を褒めるなんて家康くんが優しくなるくらい有り得ない、いや珍しいことだろう。そんな黒田くんが私の卵焼きを美味いと言ってくれたんだ。明日はきっと流れ星が見えるだろう。

「またお前、失礼な事を考えているな」
「あ、いやごめんなさい!」
慌てながら私が謝ると黒田くんはお得意の意地悪な顔をして、もう慣れたと言った。
そんなに顔に出やすいタイプでは無いと思っていたが、黒田くんにはバレてしまうようだ。

「だが井伊達と作ったには変わりないな」
「え、やっぱり不味かった?」
「だから…全くAに言っても無駄な様だな」
普通なら教室で食べるお弁当を美術室で食べるのは異様かもしれないが、私と黒田くんだけの秘密の場所みたいでなんだか少し嬉しい気がした。

お菓子と大人な黒田くん→←卵焼きと美術室



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作者名:藤の花 | 作成日時:2022年11月13日 23時

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