【鬼滅の刃】神様の巫女 弐

＊ ページ48

「一つ、誤解しないでほしいのですが……。私は鬼を増やそうとはしていません。不治の病や怪我等を負って、余命幾ばくも無い人にしか、その処置はしません。その時は必ず本人に、鬼となっても生き永らえたいか、尋ねてから……します」


今までの自分とは文字通り違う自分になるのは怖いことだと思う。……でも、それでも。生きたいと願う人がいるのもまた現実だ。
視線から嘘は感じ取れない。ってことは、今言ったことは全て本当のこと。

信じても、大丈夫な人。
あのことを聞いても大丈夫な人。


「珠世さん」


強く拳を握る炭治郎が、彼女の名を呼ぶ。


「鬼になってしまった人を、人に戻す方法はありますかっ？」







ぐるん、と愈史郎君の技で畳に叩きつけられた炭治郎。その一連の流れを見た珠世さんが、「愈史郎」と呼んで何やら黒々としたオーラを辺りに広げていた。
シュバッとまた元いた位置に座り直した愈史郎君がなにやらきらきらとしながら珠世さんを見る。


「投げたのです、珠世様。殴ってません」

「どちらもダメです」

「手を出した、ってことに変わりはないしね」


はい、と返事をしたのは、きっと珠世さんに。こいつ私のことなんか眼中にないなこんちくしょう。
いててて……と呻く炭治郎に大丈夫？ と声をかける。大丈夫だと答えた彼は、珠世さんを見て教えてくださいと言った。
彼が愈史郎君に投げられたのは、返答を聞いた彼が珠世さんに飛びかかろうとしたからだった。


結論から言えば。
どんな傷にも病気にも必ず薬や治療法があるように、鬼を人に戻す方法はあるらしい。ただ、今の時点では成し得ないだけで。


「ですが、私達は必ず、その治療法を確率させたいと思っています。……その為に、あなた達にお願いしたいことがあります」


曰く、治療薬を作る為には当然ながら鬼の血を調べる必要があるらしく。
私達に頼みたいことというのは二つあり、一つは禰豆子ちゃんの血を調べさせてほしいこと。これは私っていうか炭治郎にだな。
二つ目、できる限り鬼舞辻の血が濃い鬼から血液を採取してきてほしいこと。

禰豆子ちゃんは今、極めて稀で特殊な状態なんだそうだ。二年間眠り続けた際に身体が変化したのではないかと。普通なら、それぐらい長く人の血肉や獣の肉を口にできなければ間違いなく狂暴化するらしい。……愈史郎君絶対今ろくに話聞いてないでしょ。
珠世さんに向いてる視線がなぁ……話聞いてるそれじゃないんだよなぁ……。

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