【鬼滅の刃】神様の巫女 弐

＊ ページ38

「お主、山を出たら呼吸の常中は常にしておれよ？」

「…………そもそも常にやるから“常中”って名前だと思うんだけど、やっと言葉の意味分かったの？ 遅すぎない？」


呆れたように言えば、気に入りだと言っていたはずのお面をわざわざ外して私の顔目掛けてぶん投げられた。


「いったいんだけどなにすんの！？ っていうか熱湯消毒してないお面投げるってなに！？」

「ちょっと腹が立っての」

「気に入りの面ぶん投げるぐらい腹立ったってか！？」


見事にお面がクリーンヒットした顔が痛い。じんじんする。
事実を言っただけなのにここまで怒られることってある？ あ、もしかして事実だからここまで怒られたの？ なるほど。
……待って、なんで手元にある刀投げようとするの待って待ってそれはシャレになんない危ないから！！


「オンオフできるようになれって言ってたから、てっきり常中の文字の意味が分かんないのかと思ってた」

「まぁだ言うか」

「っていうかオンオフなんてどこで聞いたのよ。この時代まだその言葉ないでしょうが」


いやあったかもしれんけど。


「知り合いが使っとった。そいつはオンを“有”、オフを“無”と言っておった」


あったんかい。しかも地味にあってるし。


「そもそも外の国の言葉なんてのはなぁ、江戸の世からあったわ馬鹿者。その時期に伝わってきたのー」

「マジかよ知らんかった……。私歴史勉強してなさすぎでしょ」


手をついて項垂れるのは床の上。昼餉を食べる前に冒頭の言葉を言われたんだからそりゃ屋内だよね。


「……あれ？ でも“オッケー”は分かんなかったじゃん」

「分かるのと分からんのがある」

「ふぅん……？」


こういうのをご都合主義っていうんでしょ。私知ってる。


「でぇ？ 今更どったのよ」

「山から出たら毎日稽古というのも難しかろ？ じゃから、せめて呼吸だけでも鍛えとけってことじゃ」

「あー……」


確か、常中をやってると基礎体力がめっちゃ上がるんだよね？ そんなん言われなくても試験終わって山に帰って来た日からずっとやってるけどな！！


「まあお主、こっちに戻って来てからずっとやっとるみたいじゃから言うまでもないと思うんじゃが、念の為な」

「バレてら」

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