episode 2 ページ7
「こういう人間が好物なんだよねぇ……。さっきの女の報酬か、さすが」
上司が好む女の殺害後には必ず、報酬として得意とする対象を見つけてくれる。普段仕事が似合う人間ではないからか、こういう「やる時はやる」という姿を間接的に見せられると、モチベーションも上がる。
……上司のそれは好みという私情しか無いが。
「……ニートなんて勿体無い事しちゃって」
卑屈になるのも頷けるし多少同情はする。しかしある程度の年齢になると仕事をしなければ生きて行けない事を知っている身としては、完全な共感もできなかった。
降りてきた資料を眺めると、彼は随分と“炎上案件”に執着しているらしく、数名を自 殺にまで追い込んでいる。
──珍しく数柱疲労でぶっ倒れた話か。
人間程ではないが死神にも疲労は溜まる。とはいえその「ストレス」はある程度自動的に発散されるため、過労で倒れるのはかなり珍しい話ですぐに話題になった。詳細はともかく普段やってくる自 殺者に比べて少しタチが悪い者達だったらしく、普段から何万人という自 殺者を相手している知り合いでさえ「もうあんな事は御免だね」と静かに憤りながら言っていたのを覚えている。
なるほど、元凶はこのクズだったか。
「うわ、まだ死んでなかったよコイツw死ねばいいのにw」
「そうだねぇ、死ねばいいのにね」
パソコンの画面に向かってニヤニヤと不気味に笑いながら物騒な事を呟く、見るからに不健康な青年に心にも無い言葉をかける。
「……は?」
「自分こそがアンチの鑑だと思ってるみたいだけど、アンチと誹謗中傷の違いすら見分けられない君は間違いの鑑だよ」
振り返ると、穏やかな顔で穏やかに言葉を紡ぐ少年がいたのだから呆気に取られて間抜けな顔を晒している。
しかし青年が驚いたのはそこではない。
彼の足は床に着くことも無ければ、ベッドやら棚やら壁にすら、どこにもついていない。文字通り彼は浮いていた。
「何で、浮いて……」
「何で俺がこうして浮いているのか? へぇ、凄いねぇ……君は自分の状況を理解していないのかな? 君も浮いてるじゃないか」
尚も穏やかに、優しい笑顔で言葉を紡ぐ。
一方、青年は少しずつ違和感を覚えていた。
何もしていない、何もされていないのに、意識がグラつく。
そして何故か目を逸らせない。
「君は人間の社会的に浮いてるんだよ? 分かってる? ……未来ある人間の命を奪った罪は重いよ?」
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シャル@如月唯奈(プロフ) - ハジメマシテ!ULOGから来ました、シャルといいます。小説めちゃめちゃ面白かったです!文章の書き方とか世界観とかめちゃめちゃ好みで、ドンドン読んじゃいました(笑)これからも頑張ってください、応援してます! (2020年1月18日 22時) (レス) id: 6e2bf13c08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天楽 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年6月25日 23時